「やよい軒」に店舗数も出店ペースも劣る

大戸屋の価格の高さは、出店できる立地が限られるという問題を内包している。都市部であれば同程度の価格帯の飲食店がたくさんあるため、大戸屋が特段に高いとは感じられない。しかし地方はそうではなく、価格の高さが際立つことになる。そのため、収益を上げられる場所は限られる。大戸屋の国内店舗数がここ数年350店程度の横ばいなのはこの理由が大きいだろう。

やよい軒の「しょうが焼定食」は630円(写真=やよい軒ウェブサイトより)

これは同業の「やよい軒」と比較すると分かりやすい。やよい軒は定食メニューの大半が800円未満とお手頃だ。「しょうが焼定食」や「サバの塩焼定食」といった定番商品は630円と、圧倒的に安い。この価格帯であれば地方でも十分戦える。そのため、出店余地は大戸屋よりも広い。

事実、やよい軒の店舗数は大きく伸びている。5月末時点の国内店舗数は380店で、1年前から24店増えた。現在の店舗数は大戸屋を上回り、近年の出店ペースもやよい軒のほうが上だ。

コスト高に値上げで対応するしかなくなっている

大戸屋は出店余地が限られているため、出店攻勢がかけられず「規模のメリット」を発揮できずにいる。店舗数が増えれば、規模のメリットでコストの割合が低下し、利益が生じやすくなる。そこで生じた利益を、商品価格を据え置くための原資に利用できるのだ。

大戸屋の収益性の悪化の一因はここにある。昨今のコスト高に対し、値上げで対応せざるをえなくなっているのだ。価格帯が高くなれば、出店余地はさらに狭まる。店舗数を増やせなければ、規模のメリットはますます発揮できなくなる。大戸屋はこうした悪循環に陥っているのだ。

一方、やよい軒の収益性は大戸屋ほど悪くはない。運営会社のプレナスが、持ち帰り弁当店「ほっともっと」を国内に2700店超を展開していることも大きい。グループで規模のメリットを発揮できているのだろう。