コンサルで培った能力は経営者として活きるのか?
問題は、分析的な能力が高まれば経営者として優れていくのか、ということです。
答えは……
「イエスかもしれないけど、ノーかもしれない」です。
禅問答みたいですね。ちょっと解説します。
経営者の分析的な能力が高まると、いろいろな課題に対して、真に大切な部分にフォーカスできるようになります。例えば、売上が減っているとします。単に営業マンに「もっとお客さん先を回って来い!」と言うのは、闇雲に発言しているだけです。
もし売上減少の原因が営業マンの「さぼり」にあるのなら、この対応は正しい。でも、全く違う要因、例えば製品の品質が下がったとか、競合他社が安い製品を投入したとかなら、全く違う対応が求められるわけです。より正しい対応を見出すには、さまざまな情報を収集し、分析していくことが必要で、経営者にこの能力が高まれば、よりよい対応が導かれる可能性が高まります。
ですが、いくら分析力が高まっても、実行に移さなければ意味が無いのです。さんざん情報収集し、分析して何らかの示唆が得られたとしても、動かなければ何もしていないのと同じことです。
ところで、実行に移すということは大きなリスクを伴います。上手にリスクをとれない人は、より多くの情報を集めようとし、よりたくさんの分析を行おうとします。また、分析的な能力が上がれば上がるほど、皮肉なことに先が見えてしまって行動に移しづらくなってしまうものです。当人にとって、リスクがより大きく見えてしまうからです。
つまり、人によっては、分析的な能力を向上させた結果、行動に移すことに慎重になってしまうかもしれないことを意味しています。行動に移せない人は経営者として向いていません。これが「ノーかもしれない」と書いた理由です。
コンサルタントとして経験を積み、分析的な能力が極めて高いが、経営者としては今一歩、という人は、この「行動に移せない病」を患っていることが多いように感じます。