「最もひどい貧困とは、孤独であり、愛されていないという思い」

孤独はいいが、孤立はいけない、という声もあるが、孤独は孤立の内観でもある。もちろん、「一人の時間が楽しい」「一人がいい」という人は問題ないし、ひと時の「孤独」を耐え抜く力は絶対に必要だ。しかし、つらいと感じる「孤独」を無理に長期間、我慢しようとすれば、さまざまなひずみを生じる。

マザー・テレサさん(写真=iStock.com/annegeorg)

「最もひどい貧困とは、孤独であり、愛されていないという思い」とはマザー・テレサの言葉である。虐待やいじめ、貧困など、日本の多くの社会問題のB面にはつながりの欠如、孤独という問題が隠れている。

長期的な孤独に陥らない社会的な支えあいの仕組みが必要

生涯未婚率もうなぎ上りで、単身世帯も増加する中、これからは多くの人たちが「一人で生きていく」時代を迎える。

そんな中で、「孤独」を過度に美化することは問題の本質から一時的に目をそらすだけであって、根本的な解決を遅らせることになりかねない。世界各国が全速力でこの問題に取り組んでいる中で、手つかずの日本は「孤独大国」として“君臨”し続けている。

孤独に耐えるしか道がない、と長期的に閉じこもり、その殻をこすり合わせ、傷つき合わせるような社会に明るい展望は抱きにくい。

今回、小学生など20人を刺した岩崎容疑者の「動機」の詳細はまだわからない。本人がどんな立場に置かれていたのかは今後明らかになるだろう。

どのような理由も彼の犯行を正当化することはできない。

一方で、今後、こうしたことを起こさないために何ができるのかと考えた時に、「孤独」というテーマをタブーにせずに議論の俎上に載せてもいいのではないだろうか。誰にでも居場所があり、思いやりや人のぬくもりの中で、一人一人が自立しながら、長期的な孤独に陥らない社会的な支えあいの仕組みづくりについて、真剣に考えていくべき時が来ているのではないか、と強く感じるのだ。

(写真=AFP/時事通信フォト,iStock.com)
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