慢性的な孤独下に置かれた人はストレス耐性が低くなる

孤独が心臓病、認知症といったあらゆる病気のリスクを大幅に高め、人間の心身を蝕むことは多くの研究によって実証されている。人の幸福や健康に最も大きな影響を与えるのはおカネでも、成功でもなく、「人とのつながり」であることも、ハーバード大学などの多数の研究によって、明らかになっている。

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こうした健康への影響だけではなく、孤独は人間の性格そのものを変える、という研究結果も数多くある。

人はいったん孤独になると、再び、人とつながることを極端に恐れるようになる。一度拒絶された「群れ」に戻ろうとすることは、再び、拒まれ、命の危険にさらされるリスクを伴うからだ。それよりは、何とか1人で生きていくほうが安全だ、と考えて、閉じこもりがちになる。

慢性的な孤独下に置かれた人は、ほかの人のネガティブな言動に対して、極度に過敏になったり、ストレスのある環境に対する耐性が低くなったりする。さらにアンチソーシャル(非社交的)、孤独を深めていく、という悪循環に陥りやすい。このように、孤独は、恐怖心をかき立て、人を自己中心的、攻撃的にすると考えられている。

長期的に孤独の人が増えれば、日本はさらに、不寛容な社会へと変質していく可能性がある。ブランドコンサルティング会社のリスキーブランドによる調査では、この10年、日本では「冷笑主義(シニシズム)」の傾向が高まっている。日本社会では「積極的に社会とかかわる」「深く考える」という人が減り、「社会とは一定の距離を置く」「刹那的に生きる」という考え方に振れる人が増えているというのだ。

「孤独」が莫大な経済的損失を招き、社会としての寛容性を奪う

高齢者クレーマーの増加など「不機嫌な孤独社会」の萌芽はそこかしこに見えている。「孤独」の弊害は、海外では大きな社会問題としてとらえられており、「孤独」が国民の健康を害し、莫大な経済的損失を招くとして、国を挙げて調査や対策の取り組みが始まっている。

筆者はそういった孤独の負の側面について警鐘を鳴らすべく『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書)を昨年、出版したが、寄せられた多くの声が「孤独の何が悪い」「人とかかわりたくない」というものだった。

実際に、書店には「孤独のすすめ」「極上の孤独」などと、孤独を極端に美化し、その「効用」を説くような本が山のように並び、多くがベストセラーになるなど、「孤独礼賛」の機運が極めて高いことに驚かされた。