健康のためには「一生涯やせないこと」が重要
思春期以降にも体重は骨カルシウム量に影響を与えます。日本人の19~25歳の健常女子学生の場合、正常な骨密度を維持するためにはBMI20.8以上が必要です(※1)。成人女性の骨カルシウム量が低下するリスクは、20歳時と現在のBMIがともに18.5以上の女性を1とすると、「両時期とも18.5未満」では3.94、「現在のBMIだけが18.5未満」の場合は2.95に上がります(※2)。
※1) Miyabara Y, Onoe Y, Harada A et al.: Effect of physical activity and nutrition on bone mineral density in young Japanese women.J Bone Miner Metab 2007;25:414-8.
※2) Tatsumi Y1, Higashiyama A, Kubota Y et al.:Underweight Young Women Without Later Weight Gain Are at High Risk for Osteopenia After Midlife: The KOBE Study. J Epidemiol 2016;26:572-578.
この結果から、女性は一生涯やせないことが重要です。やせは、重力による骨への負荷の減少、栄養不足、女性ホルモンの低下を伴うからです。
また栄養状態は妊娠・出産にも影響します。現在では「成人の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される」〔Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)〕という概念が認められています。母体の栄養状態が悪いために小さく生まれた子供は、成人期に動脈硬化性疾患や2型糖尿病、高血圧、うつ病が併発しやすいことが明らかにされたのです。
初潮が遅れたり、無月経になったりする
心理的な原因で小食やむちゃ食いをする病気を「摂食障害」と言います。極端にやせる「神経性やせ症」(マスコミでは拒食症)と、過食後に嘔吐したり下剤を乱用したりする「過食症」があります。両疾患とも女性のcommon disease(一般的な疾患)になりました。
厚生労働省調査研究班の疫学調査では、拒食症は小学4年生から見られ、中学生で急増して、女子高校生の有病率は地域差があるものの0.17~0.56%。これは米国の13~18歳女子の有病率と同じかそれ以上です。過食症はやせていないので、見た目で発見できず、有病率は拒食症の5~10倍と見積もられています。
拒食症では栄養状態の悪さから、体が省エネモードになるため、低血圧、徐脈、低体温になり、女子は初潮が遅れたり、無月経になったりします。低血糖、肝機能障害、不整脈、感染症などの重症の合併症があり、入院治療を受けた「神経性やせ症」患者の死亡率は6~11%という報告もあります。成長期に発症すると身長の伸びが悪くなり、青年になっても骨粗鬆症や嘔吐による歯の喪失などの後遺症があります。