「やせすぎ」の女性が増えている。小学校高学年では女子の70%が「やせたい」と思っているという調査結果もある。政策研究大学院大学の鈴木眞理教授は「思春期のやせ願望がファッション性の追求というのは誤解だ。背景にはつらい現実から目を背けたいという心理がある」と指摘する――。
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小学校高学年女子の70%が「やせたい」

日本人女性で「やせすぎ」の増加が問題になっています。日本の20~50歳代の女性のやせ(BMI18.5未満)の割合は、いずれの年齢階級も10%以上で、特に20歳代では21.7%と、5人に1人です。驚くことに、平成25年度の20代女性の1日の平均摂取エネルギーは1628kcalで、第2次世界大戦直後の1696kcalを下回っていました。日本のミスユニバース代表のBMIの変遷を見ると、1959年:19.5、2006年:18.4、2012年:17.3になり、明らかにやせすぎです。

ダイエットの低年齢化も起きています。平成13年に首都圏の小学4~6年生を対象に行われたベネッセの調査では、普通体型の女児の70%がやせたいと思っており、やせたい理由は「自分に自信がもてる」「人からバカにされなくなる」などで、小学生がすでに、やせが自信や自分の価値につながると認識していることが分かりました(ベネッセ教育開発センター「モノグラフ・小学生ナウ VOL.21-2」2001年)。

注目すべきは、健康を害してでもやせたいと思う児童は、そうでない児童に比べて他人の評価を気にする傾向があり、学校や家庭でのストレスをより多く感じていたことです。ストレスから逃れるために安易にやせにのめりこんでいくという傾向が認められました。

骨のピーク量は「15歳まで」に決まってしまう

女性のやせはどのような健康被害をもたらすのでしょうか? 脂肪はダイエットの敵と思われていますが、体重の20~30%を占める最大の「臓器」です。脂肪細胞からは食欲や代謝に関わる重要な物質が分泌されていて、その一つであるレプチンは性腺機能に重要です。

女性では、体脂肪が15%以下になるとレプチン低下によって卵巣からの女性ホルモンが低下し、無月経になります。女性ホルモンは女性らしい皮膚や頭髪、ウエストのくびれた体型を維持します。女性に心筋梗塞が少ないのも、女性ホルモンのおかげです。

加えて、女性ホルモンには骨が過剰に壊されないようにする役割もあります。骨カルシウム量が減り、骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気が骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。高齢者が寝たきりになる三大原因の一つは骨粗鬆症関連の骨折です。

その予防は思春期に始まっています。日本人女子の場合、14~15歳に全身の骨カルシウム量のピーク値(Peak bone mass)が決まります。この値を高くすればするほど、骨粗鬆症のリスクが低減しますが、低栄養と女性ホルモン不足はPeak bone massを低下させるのです。