懇親会はまず、それぞれの参加者による3分の自己紹介から始まった。驚いたのは自己紹介で各人が、今月の営業報告や部下の業績などを数字で報告していたことだ。それだけではない。今後の課題や伸び悩んでいる部下のことまで報告し始めた。その一つひとつに矢島専務が「お!」とか「へ~」と合いの手を入れる。「今期は目標を達成しました」といった報告には、「よくやった、頑張った」とすかさず褒める。硬軟交ざった報告が終わった1時間後。会の締めとして、1人30秒ずつ、その場での学びについて報告し終了。

「上司はその場が明るくなるように、リアクションも大きめにすることが大切。面白い表現は復唱すること」と、聴く側の態度や意識を入念に伝えた。

次に登壇したのは、武蔵野経営サポート事業本部コミュニケーションサポート事業部部長の三根正裕氏だ。三根氏は、武蔵野が最も重視するサシ飲みの流儀を伝授。サシ飲みとは上司と部下が1対1で食事をすることで、武蔵野ではこの部下とのサシ飲みを部門長に義務化しているという。サシ飲みのルールは主に4つあるという。

①自慢話・説教禁止
②酒の強要禁止
③22時30分までには終了
④2次会は禁止

場所の設定や話の進行も順番が決まっている。スケジュールを決めるのは上司の役目で、場所を予約するのは部下の仕事。互いにあらかじめ家族や母親、友人などの情報から、趣味や経験したアルバイト、特技まで、様々な項目を埋める「自己開示シート」を記入し、提出しておく。

まずは上司がシートの項目から1つを取り上げて、5分ほど話をし、部下も同じ項目の話をする、といった順に対話を始める。その要領で複数の項目について1時間以上、じっくりと話をすることもルールのうちだ。さらに乾杯のときは2人で写真を撮ることや、部下はその日のうちにお礼のメールを入れることも、ルール化されている。

サシ飲みだけでなく、その他の懇親会、飲み会に共通したルールもある。まず、その日に誘うのは禁止。前もって互いの日程を決めて計画しなければならない。またお店は毎回同じ場所にすること。店を変えてしまうと不満のタネになってしまうからだ。2人で食事した写真とお店の領収書を添付した、報告書を提出することも義務づけている。まるで飲み会が仕事のようだ。果たして実際はどんな雰囲気なのか。

ド直球の質問が小山社長を襲う

19年3月9日午後5時半。「かに道楽」新宿本店。この日の夜、武蔵野の社長質問会が行われると聞いて、同席した。会場には様々な部門から選ばれた、部長、課長、平社員まで、肩書もバラバラの10名が会場に集まっている。