飲み会をすると、社内の風通しがよくなり、離職率も下がる。社長に情報も上がってくるという。カリスマ社長が伝授する「正しい飲み会の作法」とは。

メーカー社長が驚いた「社内飲み」の効果

「飲み会をするようになってから、目に見えて社内の仕事がスピードアップしました。特に、予期していなかったことが起きたときのリカバリーが速くなりましたね」

そう語るのは、精密板金業を営む、旭工業の橋本明秀社長だ。橋本社長は3年前から武蔵野の小山昇社長の指導を受けており、その一環で2018年から社内に「飲みニケーション」の制度を取り入れたところ、すぐに効果が出た。

橋本社長が18年から行ってきたのは、幹部社員と1対1で飲む“サシ飲み”と、社内に13あるチームの懇親会。それぞれの飲み会を社長が主催し、そのための経費も会社持ちだ。橋本社長は18年1年間で約60回の社内の飲み会に参加したという。それまでは社員と飲むのは社内行事で2、3回だった。

「私に届く報告の件数も桁違いに増えました」

社内の雰囲気も一変して明るくなったという。社員に笑顔が増え、電話対応や接客態度も変わった。社員同士や、社員と社長の距離も近くなり、離職率も格段に減った。飲み会をやるだけで、ドラスティックな変化が起こったのだ。

働き方が多様化する中で、社内における人間関係も希薄になりがちな昨今、様々な職場で昔ながらの飲み会を推奨する動きが出ている。日立ソリューションズが一般社員と部長、課長と役員など、階層が違う人と飲む際に1人3000円程度を補助する「段々飛び懇談会」を設けているほか、Sansanでは過去に飲んだことがない他部署の人との飲み会に、1人3000円を補助する「Know me」という制度を設けた。社内に社員同士が酒を酌み交わせるバーを設置する動きもある。

こうした動きに先駆けて、社内での飲み会を会社の公式行事として導入したのが、ダスキンのレンタル事業等で成長してきた武蔵野だ。同社では上司と部下が1対1で飲む“サシ飲み”を義務化しており、各部門で行う懇親会も業務の一環として開催している。飲み会の経費はすべて会社が負担しており、そのための経費は年間3000万円を超える。一方で武蔵野では社内旅行などのイベントなどにも力を入れており、それらも合わせれば6000万円超という巨額の経費をかけている。

驚くのはその成果だ。同社には約800人の従業員が働いているが、この取り組みによって9年間幹部の退職者ゼロ。3年間新卒退職者ゼロ。人手不足で優秀な人材を確保できず、ようやく採用した社員の離職率も高い他の中小企業では考えられない数字だ。