これは飲み会なのか。それとも会議なのか。不思議な気持ちに包まれてしまったが、社員の人たちが本音で話していたことは確かだ。社長と社員の関係がここまで近いことに、驚きを隠せなかった。この距離の近さが、離職率の低さの秘密なのだろう。

▼酒を飲んで一流になる人、二流に落ちる人

酔った若手の「衝撃のひと言」

平成に入って間もなくの頃でした。社員教育をしようと試みても、みんな勉強するのが嫌だから逃げちゃうんですね。それで夜に懇親会でお酒を飲みながら勉強会をするようになったんですが、その懇親会にはアルバイトも入っていたんです。ある日のこと懇親会でお酒を飲んで、そのまま荻窪のサウナに行ったとき、1人のアルバイトがこう言ったんです。「実はこの会社、入るのやめようと思ってたんです」と。理由を聞いたら、「ここで働いてお金をもらえるか不安だったんですよ」。実はその頃、当社は家賃を抑えるために安い物件を借りていました。その建物がみすぼらしいから、お金をもらえないのではと不安になったというのです。

小山 昇氏

私はそれをきっかけに、全営業所を見栄えのいい場所に移しました。するとそれをきっかけに業績がぐんと上がったんです。それがターニングポイントでした。結局、人は酔って裸の付き合いほどに近くならないと、本音を語らないんです。

最初はデタラメに懇親会をしていたのですが、会社が大きくなると、私1人では全部やっていられなくなったので、各部署にやり方を伝えて、社内で横展開していきました。そしてたくさん失敗を重ねて、ノウハウを蓄積してきました。

たとえば人数は自分を入れて6人までにするとか、毎回同じ店にするというルールも、数々の失敗を重ねながらノウハウにしてきたことです。

私はもう70歳を超えましたが、65歳になるまでは、社内の公式事業として年間66回の懇親会すべてに出ていました。そのおかげで非常にコミュニケーションがいいですよ。コミュニケーションの基本は飲みニケーションです。お酒を飲めばバカなことも言えるし、部下と上司が本音で話せます。

うちは会社説明会で、事前に「お酒が飲めない、あるいは、お酒を飲みに行くのが好きじゃない男性は、採用しません」と明言しています。