「言いたいことを言う」が自己主張ではない

また、もし相手があなたの考えをわかっていないと思うなら、それをうまく伝えることは、あなたにとっても重要なことなのです。相手の責任ばかりにしてはいけません。特に日本人は「怒り」を表現することが苦手と言われます。そして、実のところは「謝罪」も苦手です。通底するのは、「アサーション」つまり、自己主張を避けているということ。

多くの日本人が自己主張を「自分の言いたいことを言うこと」と勘違いしています。しかし、本来は「相手のことを考えたうえで、自分を伝える」のが自己主張なのです。それが認識できず、苦手と思って避けているから、自分の怒りを説明できずにため込むし、相手への想像力のない謝罪が怒りを増幅させる。そして、マグマがたまって噴火するような怒りになってしまう。そんな不幸な関係に陥っているのです。

相手の気持ちを想像し、尊重することが、自己主張の第一歩だと認識することができれば、怒りのマネジメントも、謝罪の仕方も、もっと上手になるはずです。

戸梶亜紀彦
東洋大学社会学部社会心理学科教授
同志社大学大学院文学研究科博士課程後期(心理学専攻)修了。専門は感情心理学。
(構成=伊藤達也 写真=iStock.com)
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