お昼寝スペースには蚊帳、壁面には植物

また、あいさつでも保育士は子どもたちの手本だ。子どもたちの前では両手の指をピシッと伸ばし、ほぼ直角に頭を下げる。すると、子どもたちは真似をする。

コビー各園の保育士は子どもが「ああいう大人になりたい」という存在でなくてはならない。そういう保育士を育てるのがコビーの方針なのである。

そして、このほかにもチャレンジングな試みをいくつも導入している。

毎日、子どもたちの様子を写真に撮り、玄関にある大きなモニターで見せる。保護者が迎えに来たときにそれを見れば子どもが園で過ごしていた様子がわかる。

お昼寝スペースには蚊帳を吊って、子どもが安眠できる環境を整えている。各室の照明にも配慮し、朝の明かり、昼寝の明かり、夕方の明かりと、時間ごとに変えている。朝の明かりは外光が十分にあるので、最低限に。昼寝の明かりは、お母さんの子宮の中のようなイメージで薄暗く。夕方は、外が暗くなり寂しさが出てくるので、明るめにして、子どもが寂しさを感じないように……。

園庭がない代わりに、室内の壁面には本物の植物を植え、水を循環させるシステムを整えている。

大人が過ごすスマートオフィスよりもはるかに居心地のいい空間であり、環境だ。

子どもと同じ気持ちになって感じる

コビーアンドアソシエイツの小林照男代表(撮影=石橋素幸)

小林代表は「保育現場の仕事で重要なのは共感です」と言う。

「子どもが何か感じたとき、もしくは表現しようとしているときに、そばにいる大人(保育士)がそれを見守るのではなくて、子どもと同じ気持ちになって一緒に感じたり表現したりすることです。それが子どもと大人(保育士)の『共感』なんです。同じ気持ちになること、それができる環境にすることがわたしの仕事でもあります」

小林は「いちばんわかりやすい例が運動会です」と断言する。

「わたしは運動会(コビースポーツフェスティバル)の打ち合わせの際に保育士たちに強く言います。『いいか、真剣にやるんだぞ』と。『遊びじゃないぞ』と。

大人(保育士)は、仕事として運動会に臨んでしまい、その感覚で運動会を行いがちです。そして仕事を優先させてしまい、『子どもと共感する』ことを忘れがちになる。それではダメだ、気持ちと覚悟だと……」

保育園や幼稚園の運動会と言うと、いい意味でほのぼのした雰囲気、悪い意味でゆるい雰囲気をイメージしてしまう。しかし、コビー各園の運動会では保育士の気合がまったく違う。