2030年には専門人材が170万人不足する

一方で大きな課題となるのは、職種間のギャップだ。職種別にみると、2020年代前半には事務職で、2020年代後半には生産職などで雇用の余剰感が増す一方、2020年代を通じて専門人材の不足幅が拡大し、2030年には170万人不足するとの結果が得られる。つまり、中長期的な日本の労働需給を展望すると、本質的な課題は、人手不足ではなく、人材のミスマッチにある。本稿では労働者に求められる能力と労働者が持つ能力の差のことを人材ギャップと呼ぶ。

では、現在の日本の人材のポートフォリオはどのようになっているだろうか。三菱総合研究所(同上のレポート)で、日本の人材ポートフォリオを2軸4象限に分けて分析したものが、図表2である。ここでは、今後必要となる人材像を明確化するため、「タスク(仕事)の特性」に着目して人材を二軸四象限上にマッピングし、日本の人材ポートフォリオの姿を描き出すことを試みている。

縦軸は「ルーティン(定型的)⇔ノンルーティン(創造的)」の割合を、横軸は「マニュアル(手仕事的)⇔コグニティブ(分析的)」の割合を示す。それぞれの丸の大きさは就業者数の大きさ、色は職種を表している。

図表2が示すとおり、日本では「定型的・手仕事的なタスク」の領域に属する人材の割合が44%と高い一方で、「創造的・分析的なタスク」の領域に属する人材の割合は16%と低い。同じ手法で米国、英国とも比較してみると、前者の「定型的・手仕事的なタスク」の割合は、米国39%、英国30%と日本より低い水準にとどまる一方、後者の「創造的・分析的なタスク」の割合は、米国24%、英国34%と逆に日本よりも高い傾向がみられる。

マクロの労働需給ギャップの試算では、新技術を活用し新たなビジネスを生み出す人材の需要が増えていくことを織り込んでいるが、それに見合う専門人材が供給されなければ、イノベーションも生み出されず、日本経済は国際競争力を失ってしまうであろう。