お金は「物語や人間の関係性」を分断する

しかし最も大きいのは、お金による「文脈の毀損」である。お金という数字による取引が発生することによって、それまでのつながりや物語といった文脈が漂白されてしまうのだ。文脈が切断されると有機物は無機的なものへと成り下がってしまう。それが有機的な生命体である人間の身体には適さない。

貨幣の単位で語られると文脈が失われる(画像=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

商品をはじめとする“モノ”には、常にストーリーがある。

たとえば、コーヒー1杯にしても、豆がどのような農園で栽培されたか、その豆はどのような経緯で誕生して、さらに手に入れるのにどのような苦労をしたのか、といった豊かな文脈がある(図2)。

本来、価値あるそういった文脈が、貨幣取引の商品となった瞬間に失われてしまう。単に「○○円の商品です」といった具合に貨幣の単位で語られた瞬間、さまざまな思いや物語が漂白されてしまう。それこそがお金の持つ最大の弊害である。

文脈の毀損は、格差などよりはるかに大きい問題である。貨幣による経済が物語や人間の関係性を分断し、私たちの幸せを阻害している。しかも、知らないうちに蝕まれている。しかし、この文脈の毀損を防ぐための、お金以外の新しい解決策が出てきている。それが時間主義経済と記帳主義経済である。

山口揚平(やまぐち・ようへい)
事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。
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