スピリチュアルにはまる暇があれば「基礎医学」を

しかも脳と腸には相関があると言われているので、「脳腸環境」については特にコンディションを意識すべきである。

また心身の「心」のほうについても、スピリチュアルにはまる暇があれば基礎医学をきちんと学んだほうがいいと思っている。うつ病も脳の炎症にすぎないように、「精神的」と言われているものの90%は物理的な事象として説明できる。

それに病気についてはほとんどの人が個体の問題だと思っているが、病気は実は、「社会病」ではないかと思う。症状は肉体に表れるが、病気の本質は社会にある。10年前にはうつ病が流行り、今は発達障害、ストレス系だとIBS(過敏性腸症候群)。繊細で無防備な人ほど社会病に罹りやすいのには理由がある。

ここまでお金、信用、価値、時間、健康(エネルギー)と、お金を構成する5つの要素について述べた。本質を深掘りすると、お金を構成する要素が見えてくる。お金を得るにはその要素を一つひとつ、効率良く満たしていく必要があるのだ。

このやり方は王道である。やり方によってはマネーゲームによって価値や信用を蓄積することなくお金を得る方法があるかもしれない。だが私自身はそれらの具体的方法を知らないし、この世界の根本法則から外れていると直観している。そしてそのようなバグはやがて修正されるだろうから読者には王道を勧めたいと思う。

最も楽なコミュニケーションツール「お金」

ここまでお金を構成する要素について述べてきたが、お金を得る方法を勧めるのが本書の趣旨ではない。あくまでも本質を考えるのが本書の目的であり、お金はそのモチーフである。

山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)

では、本質的な問いは何か? と言えば、それは「そもそも経済にお金が必要だろうか?」ということである。

経済とはお金があることではない。経済とは価値が回ることである。

経済のもともとの意味は経世済民である。その経世済民のためにお金というツールは果たして適切なのか、あるいはどの程度までお金でケリをつけ、どのような場合の経済をお金以外で回すべきか、ということこそ真に考えるべき問いである。

お金は便利な道具である。言葉を交わすことなく、世界のどこでも、誰とでも価値を交換することができる。ちなみに「マネー」や「ファイナンス」はラテン語に由来するが、「人々の最終言語」という意味で、人間がコミュニケーションの最後に使う最も楽なツールである。一番身近な例は離婚の際の解決手段だろうか。

そのお金にはさまざまな問題がある。まずは格差の問題。現在、世界の富の50%以上は1%の人たちによって所有されているという事実がある。当然、それ以外の世界の人々の間でも格差は激しい。それからたびたび訪れる金融危機。お金を刷りすぎた一部の人々・機関(中央銀行や金融機関)によって引き起こされる大規模な金融危機が、普通に生きている人々の実体経済を直撃するのだ。