「専門性」「正確性」「親和性」「利己心」が価値を決める

では価値(貢献)はどういう形で評価できるのか。それにも方程式がある。

価値=(専門性+正確性+親和性)/利己心である。

「専門性」はわかりやすいだろう。私の場合、企業分析やファイナンスといった職務上の強みがある。

「正確性」というのは生産管理で言うQCD(Quality Cost Delivery)に置き換えられる。つまり品質・約束・期日を守ること。いくら専門性が高くても、遅刻や当日キャンセルの常習犯だったらマイナスの価値になってしまうだろう。信用主義経済においては誠実さで食べていくことができる。

「親和性」というのは、人間的な魅力、愛嬌、相性、謙虚さなどのこと。仕事もできて真面目なのに、人間的に嫌われてしまっては価値が発揮できない。特にコミュニティが多層化し、ネットワーク型社会になっていくこれからの時代は、柔軟さが求められる。

最後の「利己心」とは、自分の利益を考えれば考えるほど価値が下がり、逆に相手のことを考えれば考えるほど価値が上がるという意味だ。ここも非常に重要なポイントで、分母の利己心を限りなく小さくすれば、分子の専門性や正確性、親和性が小さくても価値は生み出せるということだ。

「原資」として時間の価値は上がっていく

価値の蓄積が信用となり、それを外部化してお金に変換すると書いた。

では価値を作り出す要素は何かと言えば、やはり時間である。感度の高い人であれば、時間について興味を持っている人は多いと思う。

どこでもドアを待つまでもなく、インターネットやLCC(格安航空会社)によって地球は十分小さくなった。だが、時間軸についてはまだまだ私たちが考えるべきことがたくさん残っている。純粋な労働時間もあるし、研鑽・学習にも時間がかかる。

時間から価値への転換効率の高さは一般的に「スキル」と呼ばれている。

当然、スキルを高めるために人は時間を使う。だがこの本を読む人なら、よりスキルを効率的に高める方法を習得したいと考えるであろう。ここでメタ思考が役に立つ。時間はもちろん、価値創造に使われるだけではない。余暇や消費のためにも使われる。人生の醍醐味はむしろ後者のほうにあるだろう。

先述したように、個人の信用残高を積み上げるための活動(ネットワークの構築や自己鍛錬、健康管理など)には時間がかかる。よって価値を生み出す原資としての時間の価値は上がっていく。

それに社会的欲求を満たす社会へ移行するということは、今まで以上に時間が必要になるということだ。ブランドの服を買っても満足する時間は一瞬で終わるが、海外旅行で異文化に触れる場合は、まとまった時間を確保しないといけない。