21世紀の問題解決は20世紀とは違う

GDPが継続的に成長していた20世紀では、問題解決は簡単だった。あるべき姿(To be)と、現状(As is)を把握し、そのギャップを問題として捉え、その問題を細かい要素に分解し、無駄を省きながら少しずつゴールを目指すというものだった。

20世紀と21世紀の問題解決は違う(画像=『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』)

そこで用いる手法は要素還元(要素に分解する方法)と再構成(図3)だ。

線のように細長く機械論的・科学的な解決方法が20世紀的問題解決の特徴で、そこでの問題とは定量的なものであった。「目標を立てるなら数値化せよ」という方法である。そして数値化した目標と実態の差を埋めていく。この方法では、人間はAIに負ける。

しかし、数値化したところで経済が成長しない。21世紀における問題は、「あるべき姿と現状のギャップ」ではなく、「対立」だからだ。

ここで言う対立とは、人が矛盾の両立を望んでいる状態のこと。そして矛盾とは人がAとBの両者を成り立たせようとして「もがいている」状態であり、AとBを両者とも成り立たせるためには、上位概念のCの発見こそが必要なのである。それが21世紀的問題解決の特徴である。

思考による「解」は次元の枠を超える

かつてアインシュタインは次のように言った。

山口揚平『1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法』(プレジデント社)

「我々の直面する重要な問題は、それを作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」

その解決に用いられるのが、止揚による調和の実現である。止揚とは矛盾する要素を発展的に統一することであり、ドイツの哲学者であるヘーゲルが弁証法(思考と存在を貫く運動・発展の論理)の中で提唱したものだ。

ここで先ほど紹介したメタ思考が役に立つ。

すでに述べたように、思考とは意識を概念と情報の海に漂わせ、それらを有機的に結合させる作業のことだ。情報を取り入れ続けるのではなく、取り入れた情報をもとに、意味を見出すべく、つなぎ合わせるのである。その結果として、従来にない角度や奥行きから解を導くことができる。その解は問題が起こった同じ次元にない。AIや数理計算が進化して量子コンピュータが情報処理速度を上げても次元を超えることはできない。二次元・三次元の空間を最適化できるだけだ。

人が思考するうえで用いる意識をあえて定義するとしたら、それは次元の枠を超えられる知覚のエネルギーである。この意識を使って多次元的に情報を結合できるのが我々人間ということだ。

山口揚平(やまぐち・ようへい)
事業家・思想家
早稲田大学政治経済学部卒。東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は、貨幣論、情報化社会論。1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラミング事業をはじめとする複数の事業、会社を経営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。
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