東日本大震災で被災した東北4県の寺院3199、神社5856
東日本大震災から8年が経過した。この時期、震災がらみの報道が目立つが、年を経るごとに、人々の関心は薄れていく傾向にある。震災の記憶の風化が懸念される。
とりわけ、あまり報じられることがないのが、被災地における宗教施設(寺院、神社)のことだ。震災後、既存仏教などは弔いなどの宗教活動や被災地への支援を実施し、一定の社会的役割を果たした。被災地の地域コミュニティを取り戻すうえで、寺院や神社が果たす役割は決して、小さくない。ここでは、災害被災地における寺院の現状と役割を見ていきたい。
まず、東日本大震災における宗教施設の被災状況を紹介しよう。2016年3月4日付の宗教専門紙中外日報は、東日本大震災における被災寺院・神社数を報じている。
それによると、流失、全壊・半壊・一部損壊などの被害を受けた寺院(大手10教団のみ)は3199カ寺にも及ぶ。ちなみに青森、岩手、宮城、福島の4県の寺院数は3587カ寺(文化庁「宗教年鑑」)である。
特に東北は曹洞宗寺院が多いことで知られ、45カ寺が全壊している。東日本大震災における被災の範囲は関東、北海道まで含まれるから正確な被災寺院割合をはじき出すことは難しいが、おそらく、東北4県に限れば、大方の寺院が何らかの被害を受けた可能性が高い。
また、神社に目を転じれば、神社本庁所属の神社は4385社が被災した。東北4県の神社数は5856社。神社の被災数も、衝撃的な数字である。
大型の鳥居の本格修繕費用は、軽く1000万円超
ちなみに2015年の熊本地震では995カ寺(全日本仏教会調べ、熊本県の寺院数1174カ寺)が被災している。熊本地震では国の重要文化財である阿蘇神社の拝殿・楼門が倒壊した映像を見て、衝撃を受けた人も少なくないだろう。神社の場合、とくに鳥居は安定感が悪く、倒壊の危険性が高い。しかも、高さ5m超の大型の鳥居の本格修繕となれば費用は、1000万円は軽く超えてしまう額になるだろう。
自然災害に際し、寺社は意外にもろいものだ。その理由は、建築物の規模が大きい割に、耐震補強や定期的な点検、修繕がおろそかになっていることが挙げられる。江戸時代以前に建設されたまま、ほとんど手が入れられていないという歴史的建造物も少なくない。
そうした寺社建築は瓦1枚外れただけで、それを放置すると命取りになる。雨漏りすれば、やがて梁(はり)が傷み、建物全体が朽ちていく。瓦1枚くらい、すぐに修繕できそうなものだが、そうはいかない。本堂の屋根の高さは10mを超えることはざらだし、塔になれば高さ数10mにもなる場合もある。足場を組むだけでも、相当な費用(数十万円から数百万円)がかさむ。