【ここがクリエイティブ
@神戸大学大学院経営学研究科教授 石井淳蔵】
フジッコは「やわふく」の開発の過程で、執拗なまでに市場調査やテスト販売を通じ、仮説と検証を繰り返しています。消費者の要望を取り入れるためプロジェクトを結成し、社内の各組織に存在するあらゆる知識・ノウハウを組み合わせる。そして、試行錯誤しながら開発を進める。こういった仕事のやり方を「ブリコラージュ(器用仕事)」と呼びます。
また、フジッコは、当初「食べきりの利便性」を目指し開発を進めますが、単にサイズを小さくするだけでなく、容器や味にも改良を加えています。商品の魅力を付加していった結果、予想をしていなかったところからも引き合いがきました。コンセプトが曖昧だったことが功を奏したとも言えるでしょう。新しい販売チャネルを拡大することで、フジッコは思わぬ出来事に対応しました。これは、「ロバストデザイン」という考え方に当てはまります。
練り込まれたマーケティング戦略に基づき、ターゲットや価格、販売チャネルなどを決定した場合、当初の読みと市場の反応が異なると、変化に対応しにくい。フジッコは、この点を経験から知っていたのでしょう。市場の反応を取り入れつつ改良を進めていったことで、時間や空間を隔てても通用する商品をつくることができました。ヒットの秘密はここにあると私は考えます。
この2つの手法は、簡単なようですが、実行するには多大な労力と時間を要します。何度も商品の改良を加えるとなると、営業担当者も開発担当者も大変です。仕事の領域が明確でなく、苦労を厭わない日本の組織だからこそできるやり方かもしれません。
(水野真澄=撮影)