転職できないヤツはダメなのか

Gさんの素晴らしい転職歴については私も素直に称賛の声を送りたいが、一方で、一般論としては「焦って転職という道を選択してほしくない」と考えている。

とりわけ若い方に顕著なのだが、新卒で入った大企業に身を置き続けていると「この環境は“ぬるま湯”だ」などと感じ、過剰に危機感を抱いてしまう人がことのほか多い。そして、社歴2年目、3年目で転職した大学の同期のことを「厳しい環境に身を置くスゴいヤツ」といった調子で“特別な人”扱いをしたりする。

「自分は、出身大学が偏差値上位だったがゆえにこの人気企業に入れたが、転職を成功させた偏差値下位校出身の同期のほうがよほど向上心を持っていて、ビジネスマンとして優秀なのではないか」「転職をしない限り、私はここで“ぬるま湯サラリーマン”としてぬくぬくとしたビジネス人生を送り、いつしかこの会社でしか通用しない無能になるのでは」――そんなふうに考えて、不安を募らせてしまうのだ。

同じ会社で働き続けることも「能力」

そうした気持ちになるのもわからなくはない。しかしGさんにしても、ことさらに転職をすすめているわけではないし、以前、私に「転職はしないに越したことはないですよ」「自分はたまたま転職の回数が多いだけ」とも語っていた。

ここで強調しておきたいのは、Gさんが持っているような高い「転職能力」は確かに素晴らしいものだが、その能力を持っていないとしても、社会人としての評価が下がるわけではないという点だ。

仮に一度も転職しないまま、ひとつの会社や役所に勤め続けて定年を迎える――そんな人生を送ったら、その人のことはどう評価すべきなのだろうか。言うまでもなく、それはそれで素晴らしいことだ。ひとつの組織で粛々と業務にあたり、無事にその職務を全うした。これは十分、称賛に価する。