アマゾンは「自動車すらも販売」するだろう

コトラー氏は高岡氏の指摘に理解を示しつつ、こう懸念する。

「そこで、非常に大きな問題となるのは『小売業の破滅』です。ここで小売業と私が言っているのは発注場所ではなく、店舗ベースの小売業のこと。つまり、Amazonはあらゆる商品を販売します。遅かれ早かれ、自動車すらも販売するでしょう。これは破壊的で恐ろしいことです。もしわれわれが店舗販売の利便性を残したいと思うなら、人々はどのような場合に店舗に出向き、店舗での購入を選好するのか検討してみる必要があるでしょう。

ただし、現代の消費者は、店舗をショールーム代わりにして製品の実物がどんなものなのか確かめたあと、ネットで一番安いところを探して発注することすらある。これでは小売店や百貨店は本当にたまったものではありません。店舗販売に頼る小売業者が淘汰され始めた場合、そのぶんの雇用はどうなるのでしょうか」

高岡氏も、現状をこう憂う。

「私は、あらゆる産業が破壊と変化にさらされているのではないかと思います。ただ、それぞれの産業のマーケットに変化の準備ができているか、産業の経営者層に変化を行う準備があるかどうかにもよります。例えば、日本ではタクシー業界の強い反対があるため、Uberを見かけることがない非常に珍しいマーケットのひとつです。しかし、物流業界では高齢化社会に伴って労働力が不足しています。eコマースの急速な発達によって労働力、つまりドライバーが不足しているのです」

実際、ネスレ日本は近年、ネスカフェ アンバサダー、ネスレ ウェルネス アンバサダーなど、定期購入を前提にしたeコマースを次々と展開しているが、想定以上の「配送コスト」に直面。高岡氏はそこに着眼し、新たな事業を始めたという。

「ネスレ日本はUber方式で、定年退職した高齢者が活躍できる新しい宅配サービスを開始しました。マーケティングとイノベーションは顧客の問題とその解決に基づくという点において、この事例は面白いものになると思います」

マーケティング支出が、多い企業の特徴

そんな中、企業やブランドは生き残るために何をすべきなのか。コトラー氏が最も強く訴える主張がある。「ブランドアクティビズム」だ。

「ブランドアクティビズムとは、あなたの会社やブランドの価値を、人々に対して極めて明確にするということです。企業として何を大切にするのか、ということは、どんな製品を作り、サービスを提供しているかということ以上に大切なことなのです。