高岡氏は、石油と電気が可能にした第二次産業革命に続いて、インターネットが第三次産業革命を起こしたという。例えば、Airbnbはホテル代が高いという問題を解決し、Uberはタクシーに乗らなくても安く自動車で移動できる手段を生み出した。「問題解決の手段」としてのインターネットを正しく捉えた企業が成長している。
「だからこそ、世界の超優良企業はインターネットソリューション企業で占められているのです。そして、新しい現実、顧客の抱える新しい問題とは、先進国市場で大抵の場合それは環境問題であり、日本では高齢化社会です。これらの現実と問題を把握して、われわれのマーケティングも変えていかねばなりません」(高岡氏)
「パタゴニア」のマーケティング
では、実際に興味深いマーケティングの取り組みを行っている企業について具体名を聞いたところ、コトラー氏はアメリカのアパレルブランド、「パタゴニア」の名前を挙げた。
「必要以上の衣料品は作らないという主義を真剣に追求しているからです。これは大変珍しい取り組みで、例えば歯科医が自分の仕事がなくなるまで患者の歯を健全にしたいと願っているようなものです。
古くなった衣服を捨てるのはやめましょう、新しい衣服を次から次へと購入するのはやめましょうと、パタゴニアは主張します。縫い繕いましょう、誰かに譲りましょうと。多くの会社がこうした考えに賛同するとは思えません。自動車会社は、前回売った車よりもさらによい車を売りたいと考え、できることなら毎年車を買い替えてもらいたいと考えるでしょう。
ところがパタゴニアは一貫して地球の環境保全を訴えており、自社の利益のためだけに新製品を繰り出すということをしない。他の企業でこうした倫理を実践しているのを見ることはほとんどありません」
高岡氏のいう「新しい現実」の環境問題に適した企業といえるだろう。