アメリカでは、例えば気候変動、水資源の供給維持、医療問題について立場を表明する企業が増えています。では、企業は高収益と、社会的に善良であることとを両立できるのでしょうか。私の答えは“YES”。実際は両立以上のものがあり、社会的に善良で社会問題に取り組んでいる企業ほど、高い利益を出しています。これは『Firms of Endearment』という書籍で明らかにされています」

この書籍では、BtoB企業も含め、人々に親しみがあるブランドほど、業績がよく収益が挙げられるというデータが示されている。さらに、「人々に愛される企業ほど、マーケティング支出が少ない」のだという。

「愛されない企業は、生き残りに必死であるがゆえに製品を買ってもらうためのマーケティングの支出を増やします。一方、愛される企業は、消費者自身が製品の宣伝をしてくれるので、多大なマーケティング支出は必要ありません。つまり、マーケティング予算を削るためにできる最も知的なやり方は“愛される企業になること”です。そうすれば、消費者がブランドのアドバタイザーになってくれる。そして、社会がCtoCの側面が強いソーシャルメディアを基盤としていく中で、“消費者同士の語り合い”が、支持される企業、ブランドを作り上げる。『愛着心』こそがブランドにとって最も重要なのです」(コトラー氏)

▼ネスレ高岡社長が語る「アマゾンの強み」とは

十数年前、初めてネスレ本社での役員会議に出たときのことを今でも覚えています。テーマは「オンラインにおけるネスレの販売戦略」。今後広がるeコマース、力をつけようとするAmazonでいかにシェアを奪うかなどがスイス本社でも議論されていました。

私はそのときに「それは違う。Amazonで売ることも重要だが、長期的には自分たちで直接顧客に販売することがより大切だ」と主張しました。理由は簡単です。私たちが当時からマーケティングで抱えていた問題とは「顧客のデータが小売店のみに集まり、メーカーに集約されない」ことでした。そして、今後は顧客一人一人のデータをいかに確保し、活用できるかが一層重要になる時代がやってくると予測していました。その観点から見ても、Amazonはウォルマートを超えてますます巨大企業になっていくだろう、と。