インターネットの普及とSNSの台頭で、「消費」のあり方は大きく変わった。愛されるブランドであり続けるために、企業は何をするべきか。世界的なマーケティングの権威・フィリップ・コトラー教授と、数々のイノベーションを起こして成功を収めてきたネスレ日本・高岡浩三社長が徹底討論した――。
デジタル時代に「顧客に愛されるブランド」とは
21世紀はデジタル化、人工知能(AI)、IoTといった技術革新によって大きな時代の転換点に来ている。
インターネットの普及により、あらゆることが即座に効率よく行われるようになり、アマゾンは店舗を構える書店を崩壊させた。かつてニュースを見るために大手テレビにチャンネルを合わせていた人々は、今ではツイッターを見る。商品を購入する際には、企業の大々的なキャンペーンや権威者の助言よりも、家族や友達、そしてフェイスブックなどのソーシャル・メディア上の見知らぬ人たちのアドバイスを重視するようになってきている。
このデジタル時代において、顧客に愛されるブランドになるには、何が必要なのだろうか。
送るメッセージの内容もタイミングも個別に
過去5年間でマーケティング分野に起こった主要な変化とは何か。今後5年から10年でどのような変化が起こると予測するか。その質問にコトラー氏はこう回答した。
「この5年の変化は目覚ましいものでした。常に最大の変化をもたらしていたものは、新しいデジタルの世界です。多くの企業はまだ模索中の段階でしょう。私の見るところ、企業のデジタルへの支出は当初不十分であったものが、のちに過剰になりました。これはごく自然なことです。使いすぎの状態から、デジタルを真に有効活用する方法を学ぶ過程にあったわけです。
つまり、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャット、そしてユーチューブで何をするのか、そしてどれが役に立つのか。各企業の価格設定や製品構成に対し、個々の製品やマーケット、各メディアの視聴者に適したアピールとはどのようなものなのか。それを学ぶ段階にありました」
デジタル化に予算を割く必要がないということではなく、「無用なデジタル化」をやめ、予算も50%ではなく、15~20%というような適切なスケールに収まるということ。