「国会議員の医師へのアクセス法は2通り。1つは支持者の陳情によるもの、もう1つは議員本人が入院する場合です。前者の場合、医療政策課など都道府県庁の医療を仕切る部署に秘書が連絡して、目当ての病院の病院長に一報を入れさせます。病院長は、行政に病院の増床の許認可を握られていることもありますが、政治好きの病院長も多く、受け入れはスムーズ。国会議員自身の入院は、地盤は近いが敵対関係にない、医療に強い他の議員に直接お願いすることが多い」

結局は地位や名声、コネがモノを言うのか――。ところが、そうとも言い切れない。「昔は大学病院で政治家の紹介というケースをよく見聞きしましたが、今はどうでしょうか」と疑問を呈するのは、紀尾井町内科の市村有紀子院長。「最近は礼儀をわきまえていない政治家が多く、無理に紹介しても逆に顔をつぶされてしまうこともあります。政治家という肩書で押し込めるという時代ではなくなってしまったんです」と、その効力には否定的だ。

一方、冒頭の匿名外科医は、

「『強いコネによる紹介だからいい治療を受けられるに違いない』と思い込んでいる患者に限って、採血すら私にやってほしいとゴネる。私には私にしかできない治療法があり、それを待っている患者がいるということも理解してほしいですね。どんなコネがあろうと、常識外れな要求をされればいい感情は持てません」

と、迷惑そうに本音を語る。

名医にアクセスするなら紹介状は必要

「たしかに、親しい人から紹介された患者であれば、ちょっとした空き時間に『病室に顔を出しておこうかな』『雑談をしてリラックスしてもらおうかな』というくらいのことは考えるかもしれません。ただ提供する医療行為の質は、どんな人からの紹介であろうと、どんなバックグラウンドを持った人であろうと同じです。なぜなら、その一つ一つが治療成績の結果となるから。医師として興味があるのは病気そのものなんです」(匿名外科医)

いずれにせよ、名医にアクセスするには、紹介状は必要と考えたほうがいいだろう。そもそも、名医と呼ばれる人の大半は設備の整った大病院に所属しているため、紹介状がなければ特定療養費が数千円から2万円程度かかってしまう。紹介状は、自分のかかりつけの医師に頼むのが普通だ。

「この医師にかかりたいと具体的に要望すれば、紹介状は必ず書いてくれます。紹介状を受け取った医師が拒むことはありませんから、目的の名医に到達することならできます。ただ、実際に受診できるまで“○カ月待ち”する覚悟は必要。もちろん緊急性がある場合は、かかりつけ医から『急いで診てください』と相手の病院に伝えてもらえば、早く診てもらえる可能性はあるでしょう。付け加えると入院だけでなく通院が必要となったときに、通える距離かどうかも大事」(市村氏)

患者の病状に最もフィットした名医を紹介してくれるなら、理想的だ。