「安倍1強」に終止符を打つには、野党の力では無理だ。野党にその力がないからだ。安倍首相が国民のことを思うのなら、安倍首相自身が「1強」の驕りを自覚し、謙虚になる必要がある。それには新聞をはじめ、メデイアが安倍首相や安倍政権を正しく批判し、世論を動かすことである。

私たち国民も「安倍1強」のもたらす弊害を認識してきちんと意見を述べるべきだ。いまはだれもがフェイスブックやツイッターで発信ができる。SNSを使わない手はない。お正月の料理を映像にしたり、愚痴を掲載したりするだけがSNS活用ではない。

「官邸の下請け機関化、翼賛化、空洞化」

さてこんなことを思いながら新聞各紙の2019年元日付社説に目を通した。元日の新聞にはその新聞のカラーがにじみ出る。とくにスタンスを明確にして論じる社説がおもしろくなる。

朝日社説は「政治改革30年の先に」「権力のありかを問い直す」との見出しを掲げ、中盤で「弱い国会を強くせよ」(小見出し)と主張している。

「官邸の下請け機関化、翼賛化、空洞化――。昨今の国会の惨状を形容する言葉の数々だ」
「ここに、政治改革を通じた権力集中の負の側面が如実にあらわれている」

こう指摘したうえで主張する。

「どの機関にどんな権力、権限を配分するのが適正か。改革の手直しを試みる際、最も大切な視点である」
「国会を強くする必要がある」

安倍政権を嫌う朝日社説だけに国会の空洞化を問題にして健全な国会運営を訴えている。沙鴎一歩の主張と似ている。

「首相の専権」と仰々しく語られる衆院の解散権

沙鴎一歩も国会を強くすることには賛成である。前述したように「安倍1強」のもとでは権力のバランスに欠くからだ。

朝日社説は権力分立の重要性を次のように指摘している。

「議院内閣制の下では、内閣とそれを支える衆院の多数与党が一体となっている。与党は数の力で政府提案を次々通していこうとする」
「一方で国会には、政権中枢や各省庁の活動を監視する役割がある。行政府VS.立法府という権力分立の構図である」

朝日社説は「衆院の解散権」の問題点についても言及している。

「『首相の専権』などと仰々しく語られる衆院の解散権にも、縛りをかけなければならない」と訴え、「安倍政権の不意打ち解散戦略は、改革の眼目の一つだったマニフェスト選挙を台無しにした。大義も争点も不明なまま、有権者は投票を強いられた」と指摘する。

なるほど、“衆院解散→総選挙”は安倍首相に限らず、国会運営に切羽詰まったときの政権がよく使う手法である。郵政民営化を訴えた小泉純一郎元首相の郵政解散は記憶に新しい。古くは吉田茂元首相の「ばかやろう解散」なんていうのもあった。