民主党大統領候補のダークホース

今回の中間選挙から、1年3カ月後のプライマリー(大統領選予備選挙)に向けて見えてきたことがある。まず与党共和党に関して言えば、こちらは完全にトランプ党になってしまった。現職のトランプ大統領の応援がないと当選できないということで、16年大統領選挙の共和党指名争いでは互いに激しく罵り合っていたテッド・クルーズ上院議員(テキサス州)でさえトランプ大統領に応援を求めて、薄氷の勝利を収めた。もともと共和党内には反トランプ勢力が多かったが、今回の中間選挙では背に腹は代えられないとトランプ大統領に応援を頼んでかろうじて当選した議員が多い。結果、「共和党ではなく、トランプ党になった」と言われている。従って、今後、トランプ大統領の罷免や辞任がない限り、共和党から対抗馬は出てこない可能性が高い。仮に予備選に出てきても、再選を目指すトランプ大統領にバカにされ、ケチョンケチョンに叩かれる。それを恐れて出てこないと思う。

一方、民主党の大統領候補は現時点では見えない。それも当然で、民主党の場合、プライマリーの後半に浮上したダークホースが大統領候補になるケースが多いのだ。たとえばクリントン元大統領が出てきたときにはアーカンソーに弁が立って若くハンサムな候補がいるということで、プライマリーの後半に急浮上した。またオバマ前大統領の場合も、立候補時点はヒラリー・クリントン氏に知名度で圧倒的に負けていたが一騎打ちを制している。今回の中間選挙では民主党のダークホース候補が一気に飛び出してきた。たとえばテキサス州の上院選でテッド・クルーズに僅差で敗れたビト・オローク氏。「オバマ二世」と言われる弁舌で支持を得て個人で90億円もの選挙資金を集めた。すでに大統領候補の1人とされる。

ニューヒロインも数多く誕生した。下院で当選した女性候補は100人に上り過去最多。内訳は共和党の13人に対して、民主党はなんと87人。民主党が奪還した議席の6割は女性候補で、民主党躍進の主役は明らかに女性だった。これは女性蔑視のトランプ大統領への反発もあっただろうし、プアホワイト(男性)を中心とするトランプ支持勢力へのカウンターとして、インテリやマイノリティーの女性が政治の世界に入ってきた側面もある。さらに言えば、若い世代が政治に関心を持ったのも今回の中間選挙の大きな特徴だった。アメリカ国民が選挙に投票するには事前に選挙人登録が必要で、投票率が上がらない理由の1つにもなっていた。しかし今回は「携帯でも簡単にできるから登録しよう」というキャンペーンが効いて、若い世代や女性が積極的に選挙人登録して投票した。その7割が反トランプで民主党議員に投票しているのだ。自分たちの投票行動が選挙結果に影響を与えたという経験を女性や若い世代が持ったことで、選挙の構造が大きく変わった可能性がある。

そうした観点からも仮にプライマリーまで生き延びたとしてもトランプ再選は非常に難しいと見る。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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