国民党と民進党で揺れ動く台湾世論
2018年11月、台湾の統一地方選挙で与党民主進歩党(民進党)が大敗を喫した。22の県と市で首長選挙が行われて野党国民党が15の首長ポストを獲得、民進党は現有の13県市から6県市にポストを大きく減らした。惨敗の責任を取って蔡英文総統は民進党の党主席を辞任した。蔡総統の求心力低下は免れないだろう。
16年の台湾総統選挙で蔡氏は過半数の支持を集めて女性初の総統に選出された。今回の統一地方選挙はアメリカの中間選挙のようなもので、蔡政権の2年間の評価であり、20年の総統選挙の行方を占うものでもある。再選を目指している蔡総統にとっては厳しい結果になったが、台湾の世論というのは大陸(中国)融和派の国民党支持と台湾独立を綱領に掲げる民進党支持の間で揺れ動くのが常だ。
国民党政権が中国に接近しすぎたときにはアラームが鳴って民進党に支持が集まる。逆に民進党政権になって中国との関係が冷え込んだときには、再びアラームが作動して国民党への揺り戻しが起きる。基本、この繰り返しだ。
中国との「敵対関係」は好まない
台湾で長い間政府や民間企業のアドバイザーをやってきた経験から言えることは次の2つだ。(1)大陸の主要製造業、輸出産業を台湾系企業が牛耳っているので中国とのあからさまな敵対関係は好まない、(2)中国が一国二制度を遵守するなら仲良くしてもいいが、北京がその試金石である香港を日増しに支配強化しているので明日は我が身、と警戒せざるをえない。
与党民進党が統一地方選で大敗した要因を、公務員優遇を是正するための年金制度改革など蔡政権の不人気政策への取り組みや蔡総統自身のリーダーシップに求める論調が多い。確かに内政上の不満も高まっていたようだが、台湾世論が敏感に反応したのはやはり中台関係だろう。
台湾で長らく与党の座にあった国民党は、国共内戦に敗れて大陸から逃れてきた人たちが率いてきた政党だ。だから中国政府としては国民党とのコミュニケーションは取りやすい。一方の民進党は、国民党の一党独裁時代に反国民党の勢力が寄り集まって結成された政党である。なかには台湾独立運動を展開する急進派の派閥もあって、中国政府は民進党を非常に警戒している。