築地市場「再開発方針」の素案が発表された

豊洲移転に伴って、2018年10月に閉場した築地市場の再開発方針の素案が東京都から発表された。築地市場跡地は20年の東京五輪・パラリンピックで車両基地として活用した後、40年代までに段階的に再開発を進めることになっている。

都の素案によれば23ヘクタールの跡地を「おもてなしゾーン(国際会議場や高級ホテル)」「水辺の顔づくりゾーン(レストランや緑地)」「交流促進ゾーン(大規模集客、交流施設)」「ゲートゾーン(交通ターミナル機能)」の4つに区分して整備していく方針。中核になるのは「おもてなしゾーン」で、国際会議や展示会・見本市の会場になる「MICE施設」の整備が想定されている。具体的な整備内容は都民などのパブリックコメントを踏まえたうえで19年度末に「築地まちづくり方針」として正式決定するそうだ。

ハッキリ言って「発想がお粗末」

解体工事が続く築地市場跡地(2019年2月21日)。(AFLO=写真)

もともと小池百合子都知事は「食のテーマパーク機能を持つ新たな市場」に整備して、築地に戻る市場業者を支援すると公言していた。しかし都の発表では支出が市場関連事業に限られる市場会計から一般会計に約5500億円で買い上げる形で所管を移して、再開発を進めるという。

一般会計で築地跡地を保有することになったおかげで、築地での市場再整備はほぼ不可能になった。それでも東京の価値を大いに高める再開発事業になるなら救われるが、素案を見る限りでは首都東京、世界都市東京に相応しい街づくりができるとは思えない。ハッキリ言って発想がお粗末だ。

MICE施設を中核にするという発想がまずいただけない。昨今、訪日外国人を引き込む集客ツールとして日本各地で巨大なMICE施設の建設計画が進められてきた。しかし国際会議や国際見本市を世界から呼び込むためには業界的な根回しからプロモーション、運営オペレーションを含めたノウハウが非常に重要で、ドンガラだけ立派につくっても簡単には招致できない。競争は非常に厳しい。