現代の東京に世界都市の風格は感じられない

また、私は世界的な見本市や展示会が開かれるMICE施設を見て回ったが、総じて街の中心部ではなく外側につくられている。ドイツではハノーバーやフランクフルトなど巨大なMICEが各地にあるが、催しがないときはMICE施設の周辺はまったく人気がなくなって閑古鳥が鳴く。そんなものを街づくりの中核に据えるべきではない。近辺には東京ビッグサイト(東京国際展示場)や幕張メッセなどの競合施設がすでにあるではないか。

未開の湿地帯に太田道灌が江戸城を築いて城下町を拓き、徳川家康の都市計画によって整備されて、中世江戸時代の東京は世界有数の大都市だった。しかし関東大震災や先の大戦を経て再建された現代の東京に、世界都市の風格は感じられない。たとえばパリの町並み、景観というのはルイ14世がベルサイユ宮殿を築いた頃から基本的に変わっていない。

ロンドンも16世紀のヘンリー8世の時代に開発が進められて原型がつくられた。ローマは2000年前のローマ時代の風格をそのまま残しているし、マドリードの街並みには18世紀のカルロス3世の都市開発が息づいている。ベルリンはかのヒトラーが「世界首都」というコンセプトでグランドデザインした都市であり、分断が解かれて1つになってみるとやはり風格ある街だ。

世界首都といえばニューヨークの代名詞だが、大規模開発と摩天楼化が始まったのは今から100年前のこと。北京は08年の北京オリンピックのために大改造して、世界でも稀なる立体都市に生まれ変わった。空気こそ悪いが今や21世紀の世界都市に相応しい風格を備えていて、東京は完全に追い越された。

築地、勝どき、晴海を「三位一体」で開発

今後は性根を据えて東京をヒト、モノ、カネが集まる世界都市へとつくり変えていかなければならない。その東京の価値を最大限に引き上げてくれる、東京に残された最大最後の開発地が築地跡地なのだ。さらに言えば、23ヘクタールの跡地の取り扱いだけではスケールが小さい。

築地に隣接している勝どきと晴海、ここは都有地がほとんどなのだから、築地、勝どき、晴海を三位一体で開発すべし、というのが石原慎太郎都知事時代に私がCGを使って提案したプランである。石原都政では跡地をバラして切り売りする案もあったが、そんなことをしたら味気ないオフィスビルが立ち並んで土日は閑古鳥が鳴く大手町のようになるだけ。前述した通り、MICE施設をコアにするのも知恵がない。