日欧EPAで、内外価格差は是正されるか

日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月1日に発効した。日欧EPAは2018年7月に安倍晋三首相とEUのトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長の3首脳によって署名された。このとき同時に地域やグローバル課題での日欧の協力を定めた「戦略的パートナーシップ協定(SPA)」も合意されている。

米トランプ政権が「アメリカ第一主義」を掲げて、環太平洋経済連携協定(TPP)脱退や中国との関税戦争など保護主義的な通商政策を推し進める中、その圧力に抗して「日欧が自由貿易の旗手として世界をリードしていきたい」(安倍首相)というわけだ。

日欧EPA署名式を終えたEUのトゥスク大統領(左)、安倍首相、ユンケル欧州委員長(2018年7月)。(AFLO=写真)

EPA発効によって日本とEU間の輸出入品にかけてきたほとんどの関税が即時撤廃、もしくは削減された。日本からEUへの輸出の大半を占めるのは自動車をはじめとした輸送用機器、電気機械、一般機械、化学工業品などの工業製品だが、工業製品はすべて関税を撤廃。日本の自動車には現行10%の関税が課されているが、段階的に引き下げられて8年目に完全撤廃される。

自動車部品については9割以上の品目の関税が即時撤廃された。つまりブレグジットで英国製に10%の関税がかけられるようになれば日本からEUに出荷したのとあまり変わらなくなる、ということで英国製に大きな地殻変動が起きているのだ。

EUからの輸入品については同じく工業製品の関税が100%撤廃され、ワインの関税も即時撤廃された。チェダー、ゴーダなどのハードチーズは16年目に関税が撤廃され、カマンベール、モッツァレラなどのソフトチーズは低関税の輸入枠をつくって徐々に税率を引き下げて、16年目に関税をゼロにする。パスタやチョコレートは11年目に関税が撤廃され、牛肉や豚肉の関税は猶予期間を経て大幅に削減される。

日本のGDP(国内総生産)は約5兆ドル。EUが約17.3兆ドル。合計すると世界のGDPの3割弱を占めて、アメリカや中国のGDPを上回る。また日本とEUの貿易額を合わせると世界貿易の4割を占める。日欧EPAの発効というのは、まさに世界最大規模の自由貿易圏の発足を意味しているのだ。