ゴールが見えないイギリスの未来

イギリスのEU離脱(ブレグジット)の刻限とされてきた2019年3月29日が何事もなく経過した。

EU臨時首脳会議後のメイ首相(2019年4月11日)。(EPA=時事=写真)

2016年6月23日の国民投票で「EU離脱」を選択(51.9%が離脱を支持)したイギリスは、17年3月29日に政府がリスボン条約第50条を履行した。

リスボン条約第50条はEUからの離脱手続きを定めた条項で、イギリスがEUに対して正式に離脱を通告したことで、リスボン条約第50条は発動したことになる。それから2年間、イギリスとEUに離脱協定の交渉期間が与えられて、2年後の19年3月29日がタイムリミット、すなわちEUとの離脱交渉がまとまってもまとまらなくても、イギリスがEUから自動的に離脱する期日とされてきた。

離脱交渉は17年6月からスタートし、18年11月にはイギリスとEUの間で合意された離脱協定案が発表された。しかし19年1月のイギリス議会で、離脱協定案は歴史的大差で否決される。タイムリミットが差し迫った3月12日、メイ首相はEUとの再交渉の結果をまとめた修正案を議会に提出したが、これも大差で否決された。

EUも無傷ではいられない

もはや案を作成して議会に通したうえでEUと再交渉する時間的余裕はなく、このままではEU側と何の取り決めもないまま、いわゆる「合意なき離脱」に自動的に突入してしまう。

イギリスとEUとの離脱協定案には、ブレグジットによる急激な変化を避けるための「移行期間」が設けられている。当然、離脱協定案がまとまらずに「合意なき離脱」となれば、移行期間は発動しない。

イギリスはEU諸国との貿易にいきなり関税がかかるようになり、通関業務が必要になる。ほかにも各種規制や法整備が間に合わずにヒト、モノ、カネの移動の自由がなくなれば、イギリス経済への影響は計り知れないが、EUも無傷ではいられない。