トランプの弾劾裁判につながるか

4年ごとのアメリカ大統領選挙の中間の年に行われるのが、中間選挙である。中間選挙では上院議員の3分の1(33議席、2018年は補欠選挙2議席を含めて35議席)、下院議員の全員(435議席)が改選となり、州知事など公選職の選挙も行われる。選挙結果は大統領の半期2年の政権運営に対する国民の審判と受け止められるし、同時に2年後の大統領選の行方を占うとも言われている。さて18年11月6日に行われた中間選挙の結果は、上院でトランプ大統領の与党共和党が多数派を維持して、下院では民主党が8年ぶりに多数派を奪還した。上院で議席を上積みして多数派を維持できたことにトランプ大統領は「素晴らしい成功を収めた」と相変わらず自画自賛のツイートをしていたが、下院で多数派を握った民主党も勝利宣言をした。では敗者なき中間選挙だったのかといえば、やはりトランプ大統領の大敗北だったと私は思う。

精力的に応援に駆け回ったが……(ミシシッピ州での応援演説、2018年11月26日)。(AFLO=写真)

上院で過半数を維持したといっても、3分の1の改選議席は民主党のほうが多く獲得している。また上院と下院で多数派が割れる、いわゆる「ねじれ」が生じたことで今後の政権運営、特に下院に先議権がある予算編成などは厳しいものになると見られているが、それだけでは済まされない。

下院の多数派を野党の民主党が握ったことで、下院に設置されているすべての委員会が民主党委員長になった。これまでは上院下院ともに共和党が押さえていたから、トランプ大統領がツイッターで好き勝手なことを言っても議会は黙(だんま)りを決め込んできた。しかし、下院に設置された26の委員会で民主党議員が委員長になったら、そうはいかない。委員会には「調査権」が付与されていて、さまざまな調査や情報収集をする権限がある。調査公聴会を実施して、証人として出頭させる権限もある。トランプ大統領といえば疑惑やスキャンダルのタネが尽きないが、今後はそうした問題に対して下院の委員会が調査権を行使する可能性が出てきたのだ。

たとえば脱税疑惑。トランプ大統領は不動産業を営んでいた両親から資産を受け継ぐ際、父親の脱税を手伝って、「一代で富を築いた」という従来の説明よりもはるかに巨額の資産、現在の価値に直して4億1300万ドルを受け取ったと報じられている。当人は「古くて退屈な話。見たこともない」と反論しているが、納税申告書の公開を拒否し続けている。

女性スキャンダルが連邦法違反につながる恐れも出てきた。16年の大統領選中にトランプ大統領と性的関係を持ったと主張する女性に口止め料を支払った問題で、トランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン氏が「候補者の指示だった」と司法取引に応じて証言、トランプ大統領の関与を認めた。口止め料は政治献金に当たり、政治資金法が定める上限を超える額が支払われたという。事実なら選挙資金法違反だ。