このように多くのメリットがあるシェアオフィスですが、やはりデメリットも。利用者は社労士や税理士といった士業の方や、IT・ウェブ系フリーランスの方など、客先に向かうことの多い個人事業主に近い業種には向いていますが、来客の多い業種や小売業などには向いていません。そのほかにも弁護士など、プライバシー保護の占有スペースを設けることが義務付けられている一部業種では開業することができないため、開業前によく調べる必要があります。

さらにプライバシー保護については、フロアを共有している以上、会話の内容を完全にシャットアウトすることは難しく、守秘を重んじる業種の場合は顧客からの信用を失うことにもなりかねず、安くなったコストよりも大きなリスクを負いかねません。

そしてシェアオフィスを利用するうえで一番ネックになるのが「信用」です。シェアオフィス利用者も提供企業も増加していますが、必ずしも利用者の取引先すべてにシェアオフィスへの理解があるわけではなく、不安を与える場合があるのも事実です。信用や権威を重視する業種の方は、ビジネス街などの従来型オフィスを借りたほうがいいかもしれません。

大切なのは、目的と場所、そして対外的イメージ。シェアオフィスを使ったからといって事業がうまくいくわけではありません。コストの低さだけなく、自分の仕事内容とシェアオフィスの適性をしっかりと考えたうえで上手に利用しましょう。

黒田尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP1級FP技能士。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書は『50代からのお金のはなし』など多数。
(構成=宮上徳重 写真=iStock.com)
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