外務大臣 前原誠司(まえはら・せいじ)
1962年、京都府生まれ。京都大学法学部卒。93年に初当選。国土交通大臣、内閣府特命担当大臣などを歴任後、2010年9月より、外務大臣。
民主党発足以来、ニューリーダーの象徴である。しかし、なかなか一皮剥けない。「子供のような直球勝負」が彼の可能性であり限界でもある。
政界の登龍門・松下政経塾の出身で、1993年に日本新党から初当選。細川政権崩壊後、新党さきがけに転じ、その後、民主党結成に参加した。2005年、郵政選挙での大惨敗で引責辞任した岡田氏の後を継いで代表に就任した。
世代交代の旗手として注目されたが、早々に「未熟さ」を露呈してしまう。ライブドア元社長の堀江貴文氏が自民党幹事長の次男に3000万円を振り込んだという所属議員の情報で自民党を責め立てた。ところが偽情報だと判明し、半年足らずで代表を辞任。裏取りをせずに猪突猛進した結果である。
この失敗が民主党の小沢支配へとつながるが、今度は小沢氏への直球批判で息を吹き返す。政治とカネを巡っては「政治資金で不動産を買うべきではない」と公然と批判し、菅政権では「脱小沢」を徹底するよう、にらみをきかせた。
「反小沢」の筆頭としてすっかり存在感をとりもどしたが、直球癖は閣僚としての飛躍に歯止めをかける。国交相当時「公約だから」と八ッ場ダムの建設を中止宣言し協議は暗礁に乗り上げた。外務相の今は、漁船衝突事件で中国を「極めてヒステリック」などと批判して溝を深め、北方領土訪問についても「極めて遺憾」と怒り、駐日ロシア大使を呼びつけて抗議。直球勝負はいいが問題解決への道筋が見えない。
最近、ある先輩に「君も忍者を持て」と忠告された。密かに情報を集め、そっと根回しする..。そんな変化球を投げる忍者のような側近が前原氏にはいない。変化球がなければ、直球も結局は生きないのではないか。