ロイター/AFLO=写真
ロイター/AFLO=写真

ノーベル賞作家 劉暁波(リュウ・シャオポー)
1955年、中国吉林省生まれ。元北京師範大学文学部講師。人権活動や民主化運動に参加し、中国当局によって繰り返し投獄される。天安門事件では、学生たちの断食抗議に参加。2010年10月、ノーベル平和賞受賞。


 

国政府の強い圧力にもかかわらず、ノルウェーのノーベル賞委員会は全会一致で、中国の獄中作家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与を決定した。これを遼寧省錦州の刑務所にいた劉氏は面会にきた妻から聞き、「賞は天安門事件で犠牲になった人のすべての魂にささげられる」と言って、涙を流したという。天安門事件から21年、言論だけを武器に中国の民主化を訴えてきた非暴力の闘士を、中国政府を除く世界が英雄と認めた瞬間だった。

1989年の天安門事件のさなか、留学先の米国から帰国し民主化運動に身を投じて以来、中国国内で民主化に向けた言論活動を続けてきた。89年に反革命罪で投獄されたのをはじめ監獄・労働改造所送りと出所を繰り返している。現在は四度目の服役中で、2008年12月の世界人権宣言60周年に合わせてネット上で発表した中国の民主化要求宣言「零八憲章」を起草したことで、10年2月より国家政権転覆扇動罪で懲役11年の刑が確定していた。

他の天安門事件の学生リーダーや学者らと同様、亡命という選択肢もあったが、頑なに拒み続けた。89年の投獄のとき、死刑を恐れて反省文を書き中国当局に許しを請うたことがある。その慙愧の念が、その後国内にとどまり闘う決意の源となったと言われている。

今は投獄によって劉氏の言論は完全に封じられているかっこうだが、その存在自体が言葉以上に雄弁に中国を問い詰める。国際社会が称える英雄を牢にとどめおくことの不条理、言論の自由を強権で封じることの野蛮さに、気づかぬふりをして国際社会で台頭していけるのか、と。それに中国がどう答えるか、天安門事件の何百という犠牲者の魂を背負う無言の言論の闘士と彼を後押しする国際世論が確かに一つの鍵をにぎっている。

(ロイター/AFLO=写真)