誓い:2
部下をうまくマネジメントしたい

部下の内面より、行動に注目しよう

部下を上手にマネジメントするには、どうしたらいいのだろうか。法政大学心理学科教授で行動分析学が専門の島宗理さんは次のようにアドバイスする。

「部下をうまくマネジメントしたいと思っているということは、いまのところそれがうまくいっていないということだと思います。だとしたら、どんなふうにうまくいっていないのかを紙に書き出してみてください」

まず、紙の真ん中に縦線を引く。その線の左側に現在自分が不満に思っている部下の行動をリストアップしていくのだ。たとえば「いわれたことはちゃんとやるが、いわれないことは一切しない」とか、「報告や相談が少ない」などである。「自信過剰だ」とか、「やる気がない」というような部下の内面に関する不満が出てきたら、その具体例を行動として書き出そう。たとえば「仕事のミスを指摘すると不機嫌な顔をする」というように。次にいま書いた行動の代わりにとってほしい行動を右側に書いていく。「熱意を持って仕事に取り組む」とか、「謙虚な態度で接する」というような書き方では抽象的すぎる。「いわれなくても自主的に仕事を探して取り組む」など、具体的に書くこと。

そして部下が左側の行動をとれば注意し、代わりに右側の行動をとるように指導していく。

「結局、管理職の仕事というのは、部下の行動を左側から右側に変えていくこと。これに尽きます」

と島宗さんは断言する。

「失敗したら、私が責任をとってやる」

ただし注意が必要なのは、線の右側に書いた行動が、「誰にとって望ましい行動なのか」ということである。上司である自分にとって望ましい行動では、独善的になる危険があるし、部下の成長にも結びつかない。あくまでも「お客様」や「会社」にとって望ましい行動であるかどうかに留意したい。

一方、武元さんは、「部下をうまくマネジメントできないのは、お互いの信頼関係が築けていないからだ」と指摘する。

「信頼関係が築けない理由の1つに、上司の側がマネジメントというものを勘違いしている可能性があります。つまり部下の行動を細かく管理するのがマネジメントだと思っている。あれをするな、これをしろと細かく指示を出し、しまいにはGPSで居場所を把握しかねない。これはマネジメントではなく管理です。こんなふうに管理されれば部下は自分が信用されていないと感じる。関係を築くどころではありません」(武元さん)

これを改善するには、「うまくマネジメントしたい」という発想を転換する必要がある。まずは部下に仕事を任せること。「いう通りにやれ」ではなく、「好きなようにやれ。失敗したら私が責任をとってやる」という姿勢をとることだ。

では、もし部下が失敗したらどうすべきか。このときこそ「人を動かす上司」になれるかどうかの境目だと武元さんはいう。

「人を動かすのが上手な人は、“原因論”と“目的論”の2つを使い分けることができます。なぜ失敗したか、原因を追求するのが、“原因論”。失敗をリカバリーして本来の目的に達するよう別の新たな道を考えるのが“目的論”。原因論だけでは部下が萎縮してしまうし、目的論だけではたるんでしまう。両方を使いこなすことです」(武元さん)