「僕は1日に50通のメールを受信します。そのメールチェックと返信に費やす時間を測ってみると、1週間で5時間近くありました」(冨田さん)

そこで冨田さんは、「件名だけを見て読まなくていいメールと読むべきメールを区別する」「メールを書くときの決まり文句の辞書登録を増やす」などの工夫を実行。結果、5時間かかっていたところを3時間に圧縮した。

「1日15分でも圧縮できれば、365日で延べ91.25時間の節約です」(冨田さん)

「仕事を効率化するには、仕事の量が必要だ」というのはヘッドハンターの武元康明さんだ。

「これはあくまでも私の経験ですが、大量の仕事をいちどきにこなさなければならないような状態に追い込まれない限り、人間は真剣に仕事を効率化しようとは思わないのではないでしょうか」(武元さん)

武元さん自身、自分のキャパシティ以上の仕事量を引き受けた経験があるからこそ、効率的な仕事の進め方を工夫するようになったという。武元さんは当時を振り返る。

「上司に向かって、『こんなにたくさんの仕事を抱えるのは無理です』と嘆いたこともあります。上司は『とりあえずやってみろ』としか言わない。必死にいろいろな方法を考えました。その都度、なんとか乗り越えていくうちに、少しずつ効率的な仕事ができるようになったのです」

自分の能力以上の仕事を引き受けろ、というアドバイスは無責任かもしれない。しかし自分の限界は自分では判断できないと武元さんはいう。

「自分で仕事量を決めていいのなら、無意識に手加減しますから、限界の一歩手前でやめてしまうでしょう。それではいままでの仕事のやり方を変えるきっかけになりません。特に若いときは、ある程度“量”をこなすことが必要なのではないでしょうか」