午前6~9時の間、乗車率200%の電車は50%以上増える。

2018年7月9日から8月10日までの約1カ月、首都圏では東京都の旗振りで「時差Biz」の取り組みが行われた。800社以上の参加企業が、時差通勤や在宅勤務を導入。鉄道会社は早朝を中心に臨時列車を走らせた。

午前8時台の混雑が激しい東京の地下鉄。緩和は進むのか。(時事=写真)

小池百合子東京都知事は時差Bizを働き方改革の1つに位置付けているが、もう1つ、大きな目的がある。それは2020年東京オリンピック・パラリンピック期間中の混雑対策だ。いまの状態で五輪を迎えると、ラッシュ時に首都圏の鉄道網が乗客増に耐え切れず、都心の主要な乗換駅で大混雑が発生する可能性が高いのである。

首都圏の毎朝の通勤客は約800万人。一方、五輪の観客は、もっとも多いと想定される日に会場の8割が埋まったとして、65万人と考えられる。800万人に65万人が加わっても、10%増にも満たない。あまり影響はなさそうに見えるが、実はそうでもないのである。

五輪の観客増は鉄道網にどれほど影響を与えるのか。観客のうち半分は自宅から、半分は宿泊施設から観戦に向かうと仮定して、シミュレーションを行った。

その結果、やはり朝の時間帯が要注意であることがわかった。午前6~9時の間、乗車率200%の電車は50%以上増える。ちなみに乗車率100%は座席が埋まり、吊り革やドア横の棒を乗客が使っている状態で、200%となると、ほぼ身動きできない。

混雑する場所は2パターンある。まず危険なのは、競技場の最寄り駅と、そこにアクセスする路線。この混雑の主役は観客だ。競技場の最寄り駅では、新国立競技場や東京体育館に近い千駄ヶ谷駅は確実に人でごった返す。また、競技場が多い臨海部にアクセスするりんかい線やゆりかもめ、埼玉スタジアム2002につながる埼玉高速鉄道は、1日の輸送量が2倍になる。

ただ、これらの路線はもともと利用客がそれほど多くない。競技の開始と終了に合わせた観客の波に注意すると、むしろ怖いのは、新木場駅でりんかい線に乗り換えられる、有楽町線や京葉線だ。両線は普段から通勤客が多いうえに、有楽町線は便利なので都内各地から観客が集中し、京葉線は沿線に宿泊施設が多い。どちらもかなりの混雑になる。