“サマータイム反対論”を押さえこむ決め手が必要な自民党
安倍晋三首相は8月7日、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗元首相と会談し、夏時間の導入について前向きな姿勢を示した。だが同日、菅義偉官房長官は記者会見で「国民の日常生活に影響が生じるものであり、大会までの期間があと2年と限られている」と消極的な姿勢を改めて示した。
サマータイムに関する議論は今になって降って湧いた話ではない。2014年10月25日付の読売新聞では森元総理の発言として「安倍首相に『2時間のサマータイムをやったらどうか』言ったら、安倍首相が『なるほど。考えてみる。役所が反対するんだ』と言っていた」と報じられている。
冒頭の安倍首相の発言は、役所としては自民党政権下の四半世紀と、さらには東日本大震災後の2011年にサマータイムを真剣に検討した上で見送った経緯があることから、役所の反対が強く内閣として推進することは容易でないと見越した上で、まずは党での議論を促したものとみられる。このまま役所に落としただけでは、これまでの議論と同様に頓挫しかねない。党としてこれまでの議論を踏まえて、反対論を押さえこめるだけの決め手を探す必要があるのではないか。
生活スタイルを変えるだけなら、他にも方法はある
政府は省エネの観点から1980年以降複数回にわたり、夏時間に関する世論調査を実施した。環境庁(当時)は1999年には「地球環境と夏時間を考える国民会議」を組織し、夏時間の呼称を公募、夏時間について理解を得るためのパンフレットも作成している。サマータイム対応のシステム改修には「2年の準備期間と1000億円が必要」という試算は、この時のものだ。
この四半世紀以上、幾度となくサマータイムの導入に向けて努力したものの、法案提出に辿り着けなかった。省エネなど効果があるとされてはいるものの、生活スタイルを変えるだけであれば他にも方法があり、情報システムの混乱や健康への影響を払拭できなかったからだ。