政府では2015年に夏に勤務時間を前倒す「夏の生活スタイル変革(ゆう活)」を展開。官公庁に導入している。サマータイムよりも緩やかに、時間そのものをいじることなく人々の生活スタイルに変化を与えようとする取り組みだが、十分に浸透しているとは言い難い。

占領期に導入された「サンマー・タイム」は大失敗だった

実は日本には夏時間を導入していた時期がある。敗戦後GHQに占領されていた1948年に内閣提出法案として夏時刻法が成立。それから4年間は「サンマー・タイム」といって時計を1時間進めた時刻が使われたが、主権回復に先立ち1952年4月11日に議員立法で廃止された。

当時は第一次産業に従事する人口が多く、もともと太陽の運行に従って仕事をしていたため、人為的に時計を早めるサンマー・タイムとは合わなかったことに加えて、民間と公務員の通勤時間が重なって朝のラッシュを悪化させ、労働時間の長期化を招いたとされている。

公正を期すならば、朝のラッシュの悪化や労働時間の長期化は夏時間よりも朝鮮戦争の勃発に伴う朝鮮特需の影響の方が大きかった可能性がある。統計を見る限り、夏時間が導入された当初の昭和23年、24年の労働時間は増えていないからだ。

サンマー・タイム廃止の理由は国民からの不人気もさることながら、逼迫していた電力事情の改善が大きかった。そういった意味で占領下のサンマー・タイムも、この四半世紀の立法努力も専ら省エネを目的として、近年では地球温暖化対策として推進されてきた。

仮に秋の臨時国会でサマータイム法が可決した場合、日本標準時システムや標準電波、政府情報システムの改修に加えて、自治体システムの改修に必要な特別交付税、民間部門の機器買い換えやシステム改修に対するサマータイム対策補助金を含めて兆単位の財源措置が必要となるのではないだろうか。