「暮らしにかかわる論戦まで尻込みする理由はない」

東京新聞は9月8日付の社説で、「安倍政治の是非を問え」との見出しを掲げ、後半で安倍首相の度量の小ささをこのように強調している。

「何より避けて通れないのは、政治への信頼回復をめぐる議論だ。森友・加計両学園の問題では、公平・公正であるべき行政判断が、安倍氏の影響力で歪められたかが問われた。関連の公文書が改ざんされ、国会で官僚の虚偽答弁がまかり通るのは異常である」

どうして「もりかけ疑惑」が起きたのか。その根底にあるのは何か。総裁選を通じて「1強」と言われる安倍政権の実態を検証する必要がある。

「法案の成立強行を繰り返す国会運営は強引で、安倍氏は野党の質問に正面から答えようとしない。石破氏が『正直、公正』を掲げるのも、安倍政権下で繰り広げられる、そうした政治の在り方に対する問題提起なのだろう」

「強引な国会運営」「多数の論理で野党の追及を逃れようとする姿勢」など検証する事項は多い。

東京社説は冒頭部分でこうも主張している。

「震度7を観測した北海道での地震対応を優先するためだという。発生直後である。災害対応を優先するのは当然だとしても、私たちの暮らしにかかわる論戦まで尻込みする理由にはなるまい」

その通りである。安倍政権、安倍政治を検証するのが今回の総裁選であるならば、「暮らしにかかわる論戦」まで控える必要はまったくない。

告示日を変えないなら、投開票日を延ばせばいい

社説として感心させられたのは、毎日と東京ぐらいである。朝日新聞の社説も読売新聞の社説も、はっきり言って「いまいち」だった。

どこが問題だったか。まずは朝日社説(9月8日付)。

冒頭から「事実上の首相選びである。実質的に短縮された選挙期間の中で、論戦の機会を十分に確保し、濃密な政策論争を実現しなければいけない」と訴えるが、当然のことであり、朝日独自の論調を欠いている。

さらに朝日社説はこう書く。

「いっそのこと、告示日自体を遅らせ、選挙全体を後ろ倒しにする、告示日を変えないなら、投開票日を延ばすなどの手立てはできなかったのか」
「石破氏は災害対応と論戦を両立させるため、総裁選の延期を主張した。首相の総裁任期は9月30日まである。国連総会などの外交日程が控えているにしても、柔軟な対応ができないはずはない」

選挙の日程を変えることには賛成だ。おもしろい主張である。

ただ、地震という大災害までも自らの選挙戦略に有利に使おうと考える安倍首相だ。選挙日程を変えれば、石破氏が有利になる可能性も出てくる。安倍首相はそこを慎重に判断して短期決戦としたのだろう。