「1日2食」の恩恵
ほぼ強制的にとらなければならない学校給食の時代も含め、それまで23年間、朝・昼・晩と3回食べることを受け入れていたのだが、朝・晩の2回でも別に問題はないことに気付いたのである。1回食事を減らせばそのぶんカネは浮くし、同行者と余計なうわさ話などに興じる必要もなくなる。しかも昼時のオフィスに残れば、静かな環境で一人ぼっちで仕事ができるのだ。昼休みで大混雑するエレベーター絡みのストレスも避けられる。
ここから私は「一日2食」にすることを決めた。その後もランチに誘われることはあったが、何度か断っているうちに「中川は昼ご飯を食べない人」という認識を周囲に持ってもらえるようになった。だから日常的に誘われることはほぼなくなったのだが、大事なプレゼンを前にして相談事があるときや、「失恋したので愚痴を聞いてほしい」なんてときには声をかけられることもあった。
そんなランチの誘いが当日前にあった際は朝食を抜くようにし、12時ではなく11時30分くらいに行くようお願いをした。たかが30分とはいえ、朝からずっと空腹状態で過ごすのはキツかったからだ。
会社に所属していた頃は「○月×日にランチしよう」と約束を交わした場合を除き、ほとんど昼ご飯を食べなかった。会社を4年で辞めてからは個人の裁量で時間を使えるようになったため、一切昼ご飯は食べなくなった。
昼時のオフィス街で見かける残念な光景
現在、ランチの時間にオフィス街に行くと、サラリーマンの上司部下が連れ立って店を探している様子をみかける。先日、印象に残ったのは、「ウオッホン、ワシは役員じゃ」風の胸を反り返らしたデブのオッサンが、いかにも出世から遠そうな子分らしいオッサンと店頭メニューを眺めながら、その店に入るかどうかを検討している様子だ。想像するに、このときの会話はこんな感じなのだろう。
役員風:マァッ、コノー、今日は肉か魚かでいえば、肉かな。この店には親子丼もあれば、カツ丼もあるしな。うん、この小鉢にヒジキが入っているのもいいねー。
子分風:ハハーッ、常務、私も今日は肉の気分であります。
役員風:ふむ、今日はやはり、天丼よりも親子丼かカツ丼の気分だなァ。オッ、しかも親子丼は名古屋コーチンを使っていて、カツ丼のカツは鹿児島の黒豚かッ! な、なぬ! カツ丼のつゆのダシは枕崎のカツオを使っておると! いやぁ、今日はカツ丼しかないな!
子分風:ハイッ、小生もカツ丼が食べたくなりました!(チッ、本当は刺し身が食いたかったのに……)