面接回数は多いにこしたことはない理由

しかし、ただ回数を漠然と増やせばいいというものでもありません。とくに後者の場合、学生との接触回数の多さを活用して、十分なプロセス設計を行う必要があります。学生の育成と意思決定を一段階ずつ引き上げる設計です。

「どのようにすれば、うちに来てくれるだろうか」と、時間をかけてベストな設計をする。戦略・戦術を練ることです。面接を重ねることで情報も蓄積できますから、それを基に個別の戦略設計を行い、戦術を練るのです。

私は、面接回数は多いにこしたことはないと考えています。心理学でザイオンス効果と呼ばれるものがありますが、接する回数が増えるほど、対象に対して好印象を持つようになる心理現象のことで、営業やマーケティングにも応用されています。

男女交際でも、最初のデートで長時間がっちり付き合うよりも、1時間程度の軽いお茶やランチ程度の付き合いを繰り返すほうが、親密度は増すと言われています。

学生は社会経験のない、いわば大人社会のシロウト。他方、学生を採れないと悩んでいる会社。学生が納得感を持つに至り、会社側も「じゃあ覚悟、決めたんだね」と言えるようになるためには、お互いに接触機会を増やしたほうが、当然ながら入社に結びつく確率は上がるでしょう。

要は、人事担当者がその学生とうまく関係を築いて、いかに相思相愛に至ることができるかです。そのための設計作りは学生ごとに違っていいのであって、自社の固定したルールにこだわる必要はないということです。

私は実際、自分の意思がまだ定まっていなかったり、他企業に気持ちが傾いていたりする学生に、「面接8回」をした経験があります。内定を出してからの面接では意味がありません。学生には、「この面接を乗り越えないと、あなたには内定が出せない」という態度を取り続けました。

なかなか内定を出さないで、嫌がらせのように思うかもしれませんが、そもそも私の面接は、面接というよりは基本的に学生の相談に乗ってあげているという感じで対応しています。そのことが大切なのです。学生にとって、不安はあるが不満ではない面接です。

志望動機を聞いてはいけない

面接で聞く定番の質問が、志望動機です。これはエントリーシートも同様です。しかし、志望動機は聞いても意味がありません。

なぜなら、それはファクトではなく学生が作り上げたストーリーだからです。何かの事実を材料に、その学生なりの解釈をして作り上げたストーリー。それを聞いても、本当に欲しい答えは見つかりません。大抵最初に出てくる志望動機の奥には、もっとリアルな欲求が隠れています。

学生をあまり理解できていない面接官は志望動機を尋ねて、「うちの会社のこと、わかってないな。全然、勉強してないね」「モチベーションが低いし、志望動機も弱いから落とそう」となりがちです。

本気で人財を採りたいのならば、学生をより深く理解すべきであり、その理解は、作り上げられた志望動機を尋ねることなどでは得られません。

礒谷幸始(いそや・ゆきはる)
リード・イノベーション 代表取締役 コーチング・コンサルタント
1981年、千葉県生まれ。私立江戸川学園取手高校から立命館大学経営学部へ進学。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、主将としてチームを大学史上初の日本一に導く。2003年に卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。営業活動をしながら、社会人アメフトXリーグ1部所属IBM BigBlueのキャプテンを務める。その後、人事として、エンターテイメント企業、東証一部飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを歴任。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任。
(写真=iStock.com)
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