会社の経理部員や人事部員たちは、何を考え、どこを見ているのか。お金の問題を甘く見ていると、「想定外」の落とし穴に落ちることもある。「プレジデント」(2018年3月19日号)では、11のテーマについて識者にポイントを聞いた。第4回は「飲み会の公私の境目」について――。
税務署が物言いをつけることはない
自己研鑽につなげたり、人脈を広げたりする機会として利用される勉強会や異業種交流会。直接、仕事の取引につながるわけではないことも多いだけに、公私の境目がわかりにくく、その参加費の扱いについて迷うことがあるかもしれない。
この場合、経理部門が社内で監視機能を果たすような大企業と、オーナーおよび同族の一存で経理処理が左右されかねない中小企業では事情が異なる。
税務署から目をつけられやすいのは、オーナー一族の意思が色濃く反映される中小企業などだ。家族でレストランに行った飲食代を会議費にしたり、家族旅行を研修旅行と称したり。社員でも、業務とかけ離れた使い道は現物給与的なもの(賞与)とされ、本人の所得税算出の際に問題となる場合がある。
一方、極端な話だが、異業種交流会と称しつつ男女の出会いの場を提供する会合に、あるいはキャバクラを会場にした、ビジネスとは無関係の集まりに大企業の社員が参加したとする。
もし経理部門がしっかりしている大企業において、そのような会合に参加した社員の申請を、実態を見抜けず経費として認めたとしても、税務署が物言いをつけることはないだろう。領収書に発行主の名として「○○○異業種交流会」などと記載されていればなおのこと、よほどおかしな場所でない限り問題視されることはない。なぜなら、「会社として認めていい費用なのかどうか」という組織の自浄作用が機能しているはず、という大前提があるからだ。
そもそも、公私の境なく社費を使うのは背任行為だ。たかだか数千円、数万円のことで評価を大幅に下げるなど、大半の社員にとって割に合う話ではない。