賃金制度見直しなら、会社はまず「諸手当」に目をつける
実際にパートタイム・有期雇用労働法の法制化を危惧している企業も少なくない。大手流通業の人事部長はこう語る。
「当社の仕事の基幹従業員は非正社員であり、これまでも労働組合の要求に応じて非正社員にボーナスを支給したり、福利厚生制度の充実を図ったりしてきました。でも法制化されるとそれだけではすまないでしょう。ボーナスを支給してもその金額が正社員よりも極端に低いということで法廷闘争に持ち込まれるかもしれません。もちろん今の業績では正社員と同等の待遇になんかできません。諸手当の支給の可否を含めた現行の賃金制度全体を見直す必要があるでしょう」
正社員を含めた賃金制度全体の見直しをするとなれば、会社側が真っ先に手をつけるのが諸手当だろう。
すでに2016年12月に政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示されている。パートタイム・有期雇用労働法は、非正規労働者に均等待遇を義務づけるとともに「待遇差の内容やその理由等」に対する説明義務を課すもので、ガイドライン案を法的に根拠づけるものだ。
▼待遇差が「合理的と言えない」ものが見直しの対象
ガイドライン案では、基本給、ボーナス、各種手当などについて、正社員とパート・有期雇用労働者の間の均等・均衡待遇の実現を求めている。
手当については、
・役職手当
・特殊作業手当
・特殊勤務手当
・時間外労働手当の割増率
・通勤手当・出張旅費
・単身赴任手当
・地域手当
など、同じ仕事をしていれば同じ額を支給する。
また、仕事内容とは直接関係のない、食事手当や社宅、保養施設などの福利厚生施設の利用は正社員、非正社員の区別なく同じにすることを求めているのも大きな特徴だ。
法律では、待遇差について客観的かつ具体的な実態から合理的な説明義務が求められるが、このうち正社員と非正社員の間の待遇差が「合理的と言えない」ものが見直しの対象になる。