社長就任時にいただいた、意外な祝辞

とくに一流と言われる方々は、この「謙虚さ」を大事にしていると感じます。各国の一流ホテルの経営者たちが集まる会合に出席したとき、ドイツの五つ星ホテルのオーナーから、社長就任の祝辞を受けたのですが、その際、「社長になっても謙虚さを忘れてはなりませんよ」とアドバイスをいただきました。一流ホテルの華やかな場にいる人が、そのようなことを言ったのには驚きましたが、国内外問わず、一流と言われる方は、偉ぶらない謙虚な姿勢を基本とされています。

全社員が常に携帯しているカード。1999年にスタートした「さすが帝国ホテル推進活動」という、サービス向上運動の柱となっている行動基準と9つの実行テーマが書かれている。

我々のホテルにいらっしゃる企業トップの皆さんも、ドアマンをはじめ現場スタッフへの気配りを欠かしませんし、帰るときには必ず車の窓ガラスを開けて、我々に手を振ってくださる。大会社のトップになればなるほど、謙虚な方が多いのです。

ビジネスの世界は、様々なネットワークがつながっていく中で、人間関係が構築され、それが最終的に商売につながっていくものです。そうした世界を生き抜くには、相手の立場や状況をしっかり配慮したうえで行動できる人でなければならないのでしょう。

ファッションについても、相手の状況や立場に配慮することは、人間関係を構築するうえで欠かせないことです。ワイシャツは必ず白地にするようにしていますが、これは冠婚葬祭など、どんな状況の方にも対応できるからです。反対にネクタイは、明るいイメージでお迎えしたいので、赤系統のものをよくつけています。また、国を代表する方がいらっしゃる場合には、その国の国旗の色に合わせた明るい色を選んでいます。スーツはグレー、濃紺系が中心でポケットチーフもつけるようにしています。足元も大事なので靴は必ず磨いておきます。

手土産についても、相手の家族構成を考えて決めています。奥様がいらっしゃる場合は、当ホテルのブルーベリーパイなどの焼き菓子を持参し、単身赴任の男性の方には、手軽に食事をとれるよう、カレーやスープなどの当社オリジナルのレトルト食品をお渡ししています。

このように相手の立場を配慮する習慣を身につけることが、結果として、自分に味方してくれる方を増やすことにつながっていくのではないでしょうか。

▼定保社長のマナー5
1:会話で「聞く」と「話す」の比率は?
6対4
2:社内・社外の会食の頻度は?
社内 週1回・社外 週2~3回(会食・パーティ)
3:定番にしている手土産は?
当ホテルの焼き菓子やレトルト食品
4:ビジネスファッションのこだわりは?
ワイシャツは白、ネクタイは赤系統
5:会食のお礼は「メール」「手紙」「電話」のどれか?
手紙

雑誌「プレジデント」(2018年6月4号)の特集「1年365日『マナー』大全」では、本稿のほか、「語彙力レッスン」「一流ビジネスマンの自分演出法」「御礼メール、御礼状の満点テンプレート」「季節の手土産 名品ガイド」など、マナーの基礎から応用まで幅広く取り上げました。ぜひ誌面もご覧ください。

定保英弥(さだやす・ひでや)
帝国ホテル社長
1984年、学習院大学経済学部卒業後、帝国ホテルに入社。営業部長、ホテル事業統括部長、東京副総支配人、第12代東京総支配人などを歴任し、2013年から現職。
(構成=國貞文隆 撮影=村上庄吾)
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