私は妻に言われるまま、「5年以内に、今の倍の家を建てます。 小山昇」と紙に書いて、実印を押しました。ようするに私は、5年後の目標を示したわが家の「経営計画書」を書かされたわけです。

酔いが覚めたとき、この「経営計画書」のことはすっかり忘れていました。私だけではありません。わが家の王様(妻)も、近くで見ていた娘も忘れていました。

ところが、3年後にこの「経営計画書」が見つかったとき、私はすでに25坪の倍、「50坪」の新居に引っ越していたのです。

デタラメでもいい。根拠がなくてもいいから、数字と期日を紙に書く。人は不思議なもので、たとえデタラメであっても、数字と期日を紙に書くと、それに向かって走りはじめます。

根拠のないでたらめな目標を達成してきた

私はこれまで、「経営計画書」に「根拠のない、デタラメな目標」をたくさん書いてきました。「変なことを書いてしまった。どうしてこんなことを書いてしまったのか」と後悔することもあります。しかし、「いついつまでにやる」と、期日まで決めているので、あとには引けません。

経営計画書の中身(画像提供=武蔵野)

42期の計画では、5年後の売上を57億4000万円、経常利益3億円としています。42期(当期)の売上は34億4000万円、経常利益3400万円なので、この計画は無謀です。

しかし、紙に書いて発表した以上、それに沿って行動しなければならない。だから、行動が変わり会社が変わるのです。10年後に、売上はその数字をほぼ達成、経常利益は完全に達成しました。

私がコンサルティングをしている、経営サポートパートナー会員の多くは、声をそろえて、こう言います。

「<経営計画書>は魔法の書。なぜなら、書いたらその通りになるから」

書いたら、その通りになる。つくると、その通りになる。それが、「経営計画書」の力なのです。

小山 昇(こやま・のぼる)
武蔵野 社長
1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒。85年武蔵野入社、89年から現職。670社以上の経営指導を手がける。国内で初めて日本経営品質賞を2度受賞(2000年、10年)する優良企業に育てる。
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