2019年度受験の本命は瀬尾まいこ、原田マハの作品
それでは、長年、中学受験指導に携わってきた経験から、2019年2月の中学入試で出題されそうな「本命作品」を2冊紹介しよう。
▼瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)
1冊目は、瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)。刊行日は2018年2月22日だ。物語の主人公は、父親と母親を計5人持つという複雑な家庭環境に育った優子。両親たちが優子に向ける愛情のあたたかさが心地よい作品だ。最近、学校教員から在校生の「親子関係」を憂慮する声を聞くことがある。この作品は「親子の絆」を考えされられるもので、子供たちに読んでほしいと願う教員も多いのではないだろうか。
また、瀬尾まいこは中学入試問題では人気作家のひとりである。たとえば、『ティーンエイジ』は普連土学園で、『狐フェスティバル』は学習院女子で、『あと少し、もう少し』は品川女子学院・淑徳与野・専修大学松戸で出題された。特に女子校では出題されやすい作家といえる。
▼原田マハ『スイート・ホーム』(ポプラ社)
2冊目は、原田マハ『スイート・ホーム』(ポプラ社)。刊行日は2018年3月8日だ。宝塚の高台にある小さな洋菓子店を舞台にした連作短編集で、瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』と同じく、家族のあたたかさが伝わってきて、ゆたかな気分にさせられる作品だ。
近年の中学入試で、原田マハは間違いなく「頻出作家」だ。その頻度は瀬尾まいこ以上だろう。今春の中学入試だけでも、成城(『飛ぶ少女』)、海陽学園(『暗幕のゲルニカ』)、田園調布学園(『リーチ先生』)の3校が原田マハの作品を題材に選んでいる。
『スイート・ホーム』が「本命」といえるのは、もうひとつの理由もある。連作短編集だからだ。短編集は中学入試の題材として人気が高い。物語の展開がスピーディなため、出題文が短くても読みやすく、教員側も問題を作りやすいためだ。
瀬尾まいこと原田マハは、過去の実績も豊富な「本命」だが、過去に出題されたことのある作家ではないが、私が出題を予想している「対抗」の作品がある。作品名をあげる前に、昨今の中学入試国語題材に見られる条件を紹介しよう。ポイントは以下の3つだ。
1.主人公が中学受験生と同年代(10代前半)
2.ただし主人公の境遇や時代背景は、現代の中学受験生とは全く異なる
3.主人公が複雑な家庭環境やさまざまな試練に悩み、葛藤する