ポルシェジャパン・七五三木敏幸 社長の答え
知らないうちに出る杭になって、実力があると認められている証拠

経営破綻の3カ月後、深夜3時にトップを任される

クライスラーで営業部長をやっていた頃のこと。2009年4月30日にクライスラーは経営破綻しました。その3カ月後の7月1日にクライスラー日本のCEO(最高経営責任者)に就任。本当に「寝耳に水」でした。夜中の3時頃に本社から電話がきて「トップをやれ」と。まさしく実力以上の仕事を託されたと思いましたね。それまでCEOの経験もなければ、CFO(最高財務責任者)の経験もない。倒産会社の再生なんてやったこともない。

「ついに社長か」みたいな高揚感は一瞬だけ。販売台数をどう増やすのか。厳しいリストラもしなければならない。考え始めたら「できるだろうか」と不安が頭をもたげてくる。翌朝、ちょっとウジウジした気持ちで出社したら、もう社長室は空っぽで秘書が新社長を迎える準備をしていた。「書類にサインしてくれ」って部下が次々とやってきて、悩む間もなく社長業に突入させられました。

結局、実力以上の仕事なんてないんです。そういう仕事にノミネートされたということは、その人は優秀なんだと思いますよ。日本では出る杭は打たれますが、アメリカ、少なくとも私がいた会社は違う。出る杭はもっと出てくるようにと引っ張られる。出る杭しか上に引っ張り上げてもらえない。難しい仕事を託されたときは、「あなたにはできる」という保証書付きなんです。


鈴木 喬
エステー会長
一橋大学卒業後、日本生命入社。エステーに出向し、1998年社長。「消臭力」などヒットを連発。
 


大野直竹
大和ハウス工業社長
慶應義塾大学卒業。入社以来、一貫して営業畑。副社長、営業本部長などを経て現職。
 


七五三木敏幸
ポルシェジャパン社長
一橋大学卒業。群馬銀行、メルセデス・ベンツ日本、クライスラー日本などを経て現職。
 
(写真=iStock.com)
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