「安定」と「安全」は違う。学歴や肩書は安全基地にならない

すると、大人は何を求めているのでしょうか? そうです、「安定」です。

私たち大人が安全基地とよく勘違いするのが、「安定こそ安全基地である」という考え方です。

では、安定と聞いて、何を連想するでしょうか。

例えば、学歴や組織での肩書といったもの。これらを安全基地だと考える人が比較的多いのです。

社会を生き抜く私たち大人にとって、一見すれば安心のもととなってきたこれらの属性は、果たして安全基地になり得るのでしょうか。

私は、そうは思いません。

学歴が高い、一流企業に勤めている、肩書があるといった心のよりどころには、むしろ個々の脳リミットを決めつけてしまい、チャレンジ精神の障害となり、成長を停滞させてしまう危険すら潜んでいるというのが私の考えです。

なぜなら、学歴だけで「自分には実力がある」と勘違いしたり、肩書があるだけで「自分は偉い」と勘違いしてしまう。やがて、そうした地位を守ることだけに必死になっていくからです。そうなると、自分の限界を超えてチャレンジできることが限られてしまいます。

もちろん、必ずしも一流大学卒や一流企業の社員であることがいけないといっているわけではありません。

これまで必死に努力をして手に入れた学歴や肩書と同じように、自分のなかに蓄積してきた知識やスキルを安全基地にすれば、新しいチャレンジをすることができ、さらなる高みへと到達することができるはずなのです。

小さな「成功体験」を積み重ねる

では、どのようにして安全基地をつくり出せばいいのでしょうか。

「小さな成功体験から始めてみる」ということを、私はおすすめしています。

あまりに大きな成功を見据えてしまうと、プレッシャーに押しつぶされたり、尻込みしてしまうときもあるでしょう。そこで、たとえ小さな成功でもいいので、「サクセスケース(成功体験)」を積み重ねていくというのが、安全基地をつくり出す重要なポイントになってくるのです。

もし、いきなり仕事でやるのが難しかったら、まずは日常の中で小さな成功体験を味わってみてはいかがでしょうか。

自分の自由時間のなかで、何か小さなプロジェクトを立ち上げ、自分で計画して、それを実行することの喜びを経験するというところから始めるのがいいでしょう。

デートや旅行の計画などは、小さな成功体験を積み重ねるうえで、最高の教材になるのではないでしょうか。

そのような喜びの経験が安全基地となることで、自分の創造性の可能性がどんどん広がっていき、脳リミットをはずして新しいことにチャレンジできるようになっていくのです。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者。1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞受賞。『すべての悩みは脳がつくり出す』(ワニブックスPLUS新書)など著書多数。新著『脳リミットのはずし方』。
(写真=iStock.com)
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